LINEとメルカリはこのほど、広報・PR担当者向けmeetup「LINE、メルカリがほしい"新しい広報像"とは?」を開催した。イベントでは「日経FinTech」編集長の原隆氏をモデレーターに、LINEマーケティングコミュニケーション室室長の矢嶋聡氏とメルカリ取締役の小泉文明氏が「広報」について語った。

広報・PR担当者向けmeetup「LINE、メルカリがほしい"新しい広報像"とは?」の様子。(左から)メルカリ取締役の小泉文明氏、LINEマーケティングコミュニケーション室室長の矢嶋聡氏、「日経FinTech」編集長の原隆氏

LINEは、2011年に提供開始されたコミュニケーションアプリ「LINE」を運営する会社。ユーザー数は世界でおよそ2億2,000万人、日本、タイ、台湾、インドネシアではトップシェアを誇る。今年7月に日米同時上場したことでも話題となった。

矢嶋氏「LINEはコミュニケーションのサービスなので、人と人をつなげるのは当然。それだけではなく、ニュースが読めたり、ゲームができたり、決済できたり、レストランの予約ができたりとか、日常生活に役立つすべてのことをLINEのアプリからすべて提供しようという戦略のもと、"スマートポータル"という存在を目指しています」

メルカリは、2013年に提供開始されたフリマアプリ「メルカリ」を運営する。現在、日本で3,500万ダウンロード、アメリカで2,000万ダウンロード。イギリスも準備中でこの冬にはサービス提供予定とのこと。月間100億円以上の流通高、1日50万品以上の出品があるという。

小泉氏「メルカリは簡単に使えること、カスタマーサポートの強化によって安心・安全に使えることが強み。売れるのが早いというのもユーザーの満足度につながっていて、売れている商品の半分が1日以内に売れています」

「広報」のミッションは採用とサービスの成長

そんな急成長を見せるLINEやメルカリの広報は、どんな仕事をしているのだろうか。

小泉氏「広報のミッションって僕は大きく2つだと思っていて、1つは会社のブランディングをした上で採用にコミットすること。ベンチャーにおいて広報は採用以外に意味がないと思っています。もう1つは、サービスをきちんとアピールすることでユーザーを増やすこと。その2つにのっとってやっています」

矢嶋氏「広報の役割は2つあって、1つは個別のサービスを成長させるためにサービスの価値を伝えること。もう1つは会社のブランディングや採用のために、会社のビジョン・ミッションを伝えることです」

――広報の仕事で「できた!」「やった!」とガッツポーズするような瞬間はどんなときですか?

矢嶋氏「自分たちが仕掛けた通りにメディア露出が上がったときですね。広報の醍醐味は、自分たちが仕掛けてメディアが動いたりユーザーが動いたりすることです」

小泉氏「メディア露出を金額換算する会社があるけど、それはほんとに意味がないと思っていて、僕たちのKPIはダウンロード数。広報でいうと採用数。ユーザーが動くことに対してダイレクトに僕らの仕事が結びつくっていうのが一番テンションが上がりますよね」

矢嶋氏「僕も広告換算みたいなのは無意味だと思っています。広告換算を到達させるために、質は問わないからとにかくメディアに露出させましょう、みたいな話になってくるんで、そこは本質的ではないかなと。出したいメッセージを出したいタイミングでどうメディアに出していくか、仕掛けた通りにいくか、あるいは世の中全体の影響力で考えたときにどのメディアに落とすと一番広がっていくのかその連鎖を考えて、狙い通り落とせたかというところが一番大きいです」

――メディアにネガティブな取り扱いをされたときにはどんな対応をしますか?

矢嶋氏「会社のステージが上がってくると、その成長フェーズによって広報に求められる対応は変わってくるのでそこにいかにアジャストしていくのかが大切だと思いますね」

小泉氏「広報には伝達役みたいなことがあります。ネガティブなことを言われても、その対応をきちんとプロダクト側に伝えて改善していくだとか、勉強会やっていくとか。外の声ってもちろん自分たちが嫌な思いすることもあるんですけど、その中での学びをちゃんと社内にフィードバックしていくっていう気持ちを持たないと。その場限りで逃げて終わる、嵐は過ぎ去るのを待つみたいなのは広報の悪い癖で、それは僕はいけてないと思っています。結果ラッキーなこともあるとは思うんですけど、本質的な考え方でいうと広報がそういう話に向き合っていけるかどうかで、その会社の筋肉質になれるかが決まります」

「広報」に求めるのはどんな人?

LINEもメルカリも広報を募集しているのだとか。イベントの終盤では、メインテーマである採用する上でどのような人がほしいかという話題に。

小泉氏「会社のサービスが好きで、このサービスを伝えたいっていう気持ちがあるような人に任せたいって気持ちがあります。僕らの会社は一次面接に通過した後、半年~1年間のスパンでの広報とプロモーションのプランニングをA4用紙1枚で書いてくる宿題を与えています。アウトプットを見ないと言っていることやアイデアがわからないので」

矢嶋氏「会社の知名度が上がってくると、知ってるからとか、普段使ってるからとかでとりあえず受けてみましたみたいな人が多いのですが、広報の根幹として大事なのは思いを持っているかということが大事。うちもアウトプットを見て判断するっていうのはやっています。

特にうちの会社のカルチャーとして、けっこうスピードが速くて、めまぐるしく動かなきゃいけないというのがあるので、受け身な人はちょっときついかなと思います。なんでもかんでも指示があるわけじゃないので。フレームのないところで動ける人がいいですね」

小泉氏「広報って自分でデザインできるじゃないですか。どういう情報をどういうタイミングで出してどういう相手にって。そういうフリーハンドでできる仕事なんですけど、そこをやらないで生きてきた人が多い。これからはそこの設計をどうできるかによってプロダクトや採用に対するポジティブな影響ってけっこう大きいと思うので、デザイン力が問われるなって。記者さんも受ける情報が多いので、そういう賢さがないと話を聞いてもらえない。昔みたいに、ねえねえ書いてよって付き合いや人脈で書いてもらえるみたいな時代が終わりに近づいています」

矢嶋氏「広報命ですみたいな人はちょっといやだな。昔だったらいかにマスメディアに取り上げられるかが大事だったけど、今ソーシャルメディアがあって必ずしもメディアを介さなくてもコミュニケーションできる。限界がわかった上で広報としてどういう役割ができるかとか、もう少し上流から考えられる人がいいですね」

――どうやったらメディアに載るかではなく、どうこの会社を成長させるかPRの立場から設計していくのか、そういうところを求めてるんですね。