国立感染症研究所は10月18日、10月3~9日の期間中の感染症発生動向調査を公開した。同調査の結果から、同期間中における1週間当たりの「RSウイルス感染症」の患者は前年同期比の2.75倍であったことが明らかになった。
RSウイルス感染症は、RSウイルスによって引き起こされる感染症。主に乳幼児の感染が問題視されており、国立感染症研究所によると生後1歳までに半数以上の子どもがRSウイルスに感染し、同2歳までにはほぼ100%の子どもが初感染するという。
軽症の場合、症状は発熱や鼻水などの風邪に似た症状が出る。ただ、重度の場合だと咳がひどくなったり、喘鳴(ぜんめい)が出たりするといった症状が出て、肺炎や気管支炎を伴うケースもある。呼吸困難に陥り、最悪の場合は死に至ることもある。
生後数週間~数カ月間程度の乳児が初めて感染した場合は、重篤な症状が出る可能性が高まる。一方で、一般的に成人が感染しても風邪に似たような症状を呈するのみで、重症化には至りにくいとされている。
全国約3,000カ所の定点医療機関から10月3~9日(第40週)の期間中に報告があった全国の患者数は7,273人。第39週の5,463人から3割以上も患者が増加している。同期間中において、都道府県別での患者数が最も多かったのは東京都の723人。2位以下は大阪府(559人)、埼玉県(445人)、神奈川県(382人)、愛知県 (309人)となっており、大都市圏で患者が増加している。
2015年の同時期の感染者数は2,643人で、今年の3分の1程度にとどまっている。今年の直近の動向を見ると、第36週に感染者報告数が3,000人を超えたのを皮切りに、4,558人(第37週)、4,204人(第38週)、5,463人(第39週)と右肩上がりとなっている。
また、直近10年間の同時期と比較しても、今年の患者数は突出している。2006年以降、今年が第40週における患者数が最多だったが、その次に多かったのは2012年の5,007人とかなりの開きがある。2016年の直近1カ月間(第37~第40週)の患者数に限定して見ると、いずれの週も過去10年の同時期において最多となっていることからも、いかに今年の患者数が多いかがわかる。
RSウイルス感染症にはワクチンがないため、予防が肝要となる。感染経路はせきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)感染と、ウイルス付着場所に触れる接触感染で、発症の中心は0歳児と1歳児。再感染以降ではくしゃみ・鼻水といったような症状が出ていても、RSウイルス感染症であるとは気づかない年長児や成人もいる。
そのため、厚生労働省は「咳等の呼吸器症状を認める年長児や成人は、可能な限り0歳児と1歳児との接触を避けることが乳幼児の発症予防につながります」としている。
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