帝国データバンクは10月17日、最低賃金改定に関する企業の意識調査の結果を発表した。調査は9月15日~30日、全国2万3,710社を対象に行われ、1万292社の有効回答を集めた。

10月1日から20日にかけて最低賃金が改定される。2016年度の最低賃金の改定は、政府の「ニッポン一億総活躍プラン」や「経済財政運営と改革の基本方針2016」(骨太の方針)、「日本再興戦略2016」などを踏まえ、最低賃金が時給で決まるようになった2002年度以降で最高額の引き上げとなり、すべての都道府県で700円を上回ることとなった。そのため、収入増加による消費活性化などが期待される一方で、人件費上昇による企業収益の悪化などが懸念されている。

最低賃金改定を受けた給与体系見直しの有無

最低賃金の改定を受けて給与体系を「見直した(検討している)」企業は35.0%となり、特に非正社員を多く抱える「小売」や「運輸・倉庫」「製造」で4割を超えた。他方、「見直していない(検討していない)」企業は49.1%となった。地域別では、「北海道」(43.4%)が最も高く、「九州」(40.7%)、「中国」(40.2%)で4割を上回った。

従業員を実際に採用するときの最も低い時給は、全体平均で約958円。最低賃金(823円)を135円上回る。「東京」において最低賃金と採用時最低時給の差額が最も大きかったが、差額が大きい地域は西日本が上位を占めた。

最低賃金改定を受けた最低賃金と採用時最低時給(都道府県別)

今回の引き上げ額について、「妥当」と考える企業は40.5%で最多。「妥当」は「高い」(11.6%)、「低い」(18.1%)を大きく上回り、総じて企業側に受け入れられている様子がうかがえる。自社の業績に対する影響では、「影響はない」が57.9%で最多。「プラスの影響がある」は1.7%にとどまった一方、「マイナスの影響がある」は21.7%と2割を超えた。

今後の消費回復への効果について、「ある」と考える企業は10.2%にとどまる一方、「ない」は53.7%と半数を超えており、消費回復に対しては懐疑的な見方をする企業が多数を占める。

最低賃金改定を受けた今後の消費回復への効果

最低賃金制度とは、国が賃金の最低限度を定め、使用者はその最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされている制度。改定後の最低賃金は全国平均で25円引き上げられ、地域別では都道府県ごとに21~25円引き上げられ時給714~932円となる(産業別最低賃金等は別途定められる)。