ところで今回の新製品の1つが、「TouchView TD4303」(Photo09)である。ハイブリッドインセルというのは、トランスミッタ側の配線はLCDと共用とし、レシーバ側のみLCDの上に置くという方式である。最近で言えば、2015年末にJDIが発表した第2世代のPixel Eyesパネルがまさにこのハイブリッドインセルであるが、この方式と完全インセルの両方をカバーするとしている。このTD4303により、TDDI向け製品ポートフォリオがさらに充実した、としている(Photo10)。
Photo09:従来はハイブリッドインセルパネルにもDDIC+タッチコントローラというディスクリート構成が必要だった |
Photo10:ちなみにタッチコントローラは元々Synapticsが保有していたIPであり、DDICは旧RSP(ルネサススピードドライバ)の保有していたIPとの事 |
次にOLED(有機EL)向けの話であるが、元々OLED向けのドライバを数年前から提供しており、それもあって現在は非常に高いシェアを持っている。ただこれはそもそもOLEDのマーケットが小さいから相対的にシェアも大きいという話で、今後OLEDの普及が進むと参入メーカーも増えてくる。ここに向けてDDICとTouch Controllerを提供していく予定としており、DDICの方は数カ月以内に製品発表をしたいとの事。ただTDDIに関して言えば、特にハイエンドで求められる高性能なものに関しては難しく、当面はディスクリートの形のみで提供する予定ということであった。
次が自動車向けの話である。Syanpticsにとっても自動車のマーケットは非常に大きな市場になりえるとしている(Photo12)。特に最近はGlass Cockpitの流れが加速しており、日本でも電子ミラーが法的に解禁になったから、表示部があるところにはすべて同社のドライバやコントローラが入り込める余地が生まれることになる(Photo13)。
Photo12:生体認証は、例えばエンジンスタートボタンに指紋認証を組み合わせることで、登録した人間しかエンジンを掛けられないようにする、といった用途だとする |
Photo13:さすがに後席のディスプレイは高級車のみという気もするが、運転席周りとかインフォテイメント周りのグラス化が加速しているのはご存知の通り |
このマーケットを同社は5段階に分けている(Photo14)が、現在第2段階に入った所で、この後個人認証となり、その先にARとか自動運転のためのコミュニケーションが控えている。一般に自動車のマーケットの場合、デザイン開始から実際にチップの出荷までは3年ほど掛かるそうで、これまではDDICやディスクリートのタッチコントローラが自動車向けに出荷されていたが、まもなくTDDIやOLEDなどを使った構成が量産車に登場し、今後数年以内に指紋認証を搭載したものが投入される、と見ているようだ。
この自動車向けのDDICの新製品が、ClearView R6A354である。こちらは最大15型のLCDに対応したDDICであるが、「LACO(Local Area Auto Contrast Optimization)」と呼ばれる技術で輝度を自動調整したり、「SRE(Sunlight Readability Enhancement)」と呼ばれる明るい場所でも読み取りやすくする技術、RGBCMYの6軸の色調変化機能、10億色(RGB各10ビット)の表示機能などを持つ。このLACOについては会場でもデモが行われた(Photo15)が、これは表示エリアを100分割し、それぞれの分割したエリアごとにヒストグラムを取って、見やすくなるように調整する仕組みである。これを利用することで、ヘッドライトなど輝度が高いところでは暗めに、逆に輝度が低いところでは明るめに自動調整することで、認識しやすくする。電子ミラーをはじめ、車のさまざまなディスプレイすべてに利用できるとする。SREは環境光の輝度を認識して、コントラストを自動調整する仕組みである。また6軸の色調補正は、例えば1台の車に複数のモニターが設置されている場合、その色味を全部で統一したいというニーズに対応するためのものだという。
Photo15:これは撮影したカメラの側が飽和してしまっているのでちょっとアレなのだが、目で見るとヘッドライトを付けた車がこんなにハレーションを起こさずに見え、一方左の黒い車の回りもやはり明確に認識できるようになっている。ちなみにR6A354そのものはまだサンプル出荷も始まっていないので、同等の機能を持つ別のチップを使ってのデモとの事だった |
ということで、2015年に比べるとちょっと自動車方面への傾倒が強まりつつあることを確認できた発表内容であった。