--:その解決策としてテストベッドを開発したと? Philips氏:imecとHolst Centreが開発したテストベッドでは、簡単に新しいIoTアプリケーションを試したり、開発することができ、すでに企業やパートナーに向けて提供しています。このテストベッドは、IoTアプリケーションの市場導入を促進するために、自社のセンサや無線通信、アイデアをテストすることができます。例えば、ホームオートメーションに特化した企業がどのセンサを家庭環境に追加できるか、どのように実装できるかを評価テストを行いたい場合、構想を試すために用いることができます。テストベッド自体はオープンソースと市販部品で構成され、容易に構成することができるため、障壁を下げることができます。
--:すでに活用している企業もあるのですか? Philips氏:imec/Holst Centreは、このテストベッドを第3者に提供するだけでなく、自分たちでも、独自の技術とアルゴリズムの実証を行い、現在のボトルネックの探索に使っています。実際に、大気汚染や空気品質を測定するためのテストベッドをすでにいくつかの企業に提供しています(図2参照)。現在、空気品質をモニタリングできる市販のシステムはほとんどありません。例えば空気品質が大きく変わりやすい環境であるオフィスビル、駐車場や寝室など、具体的に空気品質を局所的に測定できるシステムは、ほぼ存在しません。テストベッドを使用して、約20のガス分子センサから成るセンサネットワークを開発した例もあります。このセンサは温度、相対湿度、周囲光、CO2、NO2および揮発性有機化合物(VOC)を測定できます(図3参照)。データはインターネットで転送されゲートウェイに送られる事で、リアルタイムに計測できるようになっています。
図2 大気汚染(空気品質)測定に向けたimecのマルチセンサネットワークの概念図 (出所:imec/Holst Centre) |
図3 NO2センサのためのIoT読み出しボード (出所:imec/Holst Centre) |
--:テストベッドをどのように普及させる計画ですか? Philips:現在、私たちのテストベッドは3カ国で展開されています。オランダでは、Holst Centreのオフィスビル、アイントホーフェン市街、それにアイントホーフェンにあるザ・ストリップと呼ばれるハイテクキャンパスに設置しています。ベルギーではimec本部キャンパス、それにインドのバンガロールにあるimecの研究支所にも設置しています。そして今、imecとHolst Centre以外にもこのテストベッドを展開する準備が整いました。例えば、imecが創設メンバーでもあるIoTベンチャーiMindsの「モノの都市(City of Things)プロジェクト」にこの技術を実装します。このプロジェクトはiMindsが市内にIoTセンサネットワークを設置することを考えています。さらに、Meise(ベルギー)の植物園にIoTネットワークを導入します。空気品質と生物学的パラメーターとの組み合わせにより、研究者、学生や観客にとって、森林の健康と成長について深く考察するきっかけとなるでしょう。また、企業はアプリケーションのために最も適した市販のガスセンサを選択するためにこのテストベッドを利用することができます。例えば、エアコンに空気品質測定システムを結合するなど、imecのアルゴリズムを追加したり、新しいアプリケーションを開発したりすることも可能になります。