住宅購入を検討する際、住宅ローンをいくらまで組んでいいのかが気になるところ。今回は「30歳で世帯年収1,000万円」という人のケースから、住宅ローンの考え方をファイナンシャルプランナー佐藤章子さんに教えてもらった。


人生最大の出費である住まいの購入。ローンも年収の数倍借りるのが普通です。これからの人生に必要な支出や万一の際の対応方法などいろいろ考えなければなりません。しかし考えるといっても、あくまで仮定の話をどう判断すればよいのか悩ましいところです。

人生最大の出費である住まいの購入。ローンも年収の数倍借りるのが普通です。これからの人生に必要な支出や万一の際の対応方法などいろいろ考えなければなりません。しかし考えるといっても、あくまで仮定の話をどう判断すればよいのか悩ましいところです。

一般的な標準回答

住宅金融支援機構のホームページで試算してみましょう。30歳であれば、既婚・未婚、共働き・専業主婦、子供の有無、その他さまざまな条件設計が考えられます。ここでは考え方を簡素にするために収入合算等を行わず単独で借り入れする場合を考えています。参考に妻の年収400万円で夫が残りの600万円で夫が単独で借り入れたケースも併記しておきます。フラット35の借入額の上限は8,000万円ですので、年収的にはそれ以上可能でも8,000万円となっています。65歳まで勤務可能でも、60歳でいったん給与体系が変わることもありますので30年返済も参考にしてください。

なお、元利均等とは返済期間を通じて毎月の返済額が一定になるように計算された返済方法で、当初の毎月の返済額の内訳は利子分が大半を占めていて、返済残高はなかなか減りません。そのために総返済額は元金均等と比較して多くなります。ただし、毎月の返済額が変わりませんので生活設計がしやすくなります。一方、元金均等返済方式は元金を総返済月数で割って、それに利子分を加えて返済しますので、当初の返済額は多くなりますが、次第に返済額が減少していきます。総返済額は少なくなります。若い夫婦で、子どもが義務教育を終えるまでにより多く返していこうというケースにはメリットがあります。

「フラット35 年収別借り入れ可能金額試算(単位: 万円)」

また、下記のフラット35の規定によると、年収に対する毎年の返済可能額は
1,000万円×35%=350万円 29.2万円×12カ月=350.4万円≒350万円
600万円×35%=210万円 20.1万円×12カ月=241.2万円>210万円

600万円の場合は他に400万円の収入がありますが、子育て等で妻が離職する可能性も考えておいた方がよいでしょう。また、厳密には手取り収入を目安に考える方が無難です。

「フラット35 総返済負担率」

個別に自分たちのリスクを考えてみよう

上記の標準的な目安をベースに、自分たちの利点やリスクを判断して借入金額を考えます。年齢で考えれば、若い方が病気等に罹患するリスクも小さく、再就職や人生の立て直しもやりやすくなります。また親も現役であれば、一時的な支援も得られ、その間に立て直しも可能であるケースも考えられます。

住宅ローンで最大の問題は、病気や離職を別とすれば、子どもの教育機関とローン返済期間が重なる時期です。子供が2人で3歳違いとすると、15歳から22歳の7年間に3年をプラスした10年間を乗り切らなくてはなりません。その後は自分たちの老後の準備が待ち受けています。

さまざまな問題解決に最大の防御は収入を増やすことです。夫婦ともに公務員で、今後とも共働きを定年まで続ける予定であれば、リスクはぐっと少なくなります。生活スタイルを膨らませずに、片方の収入のみで生活し、繰り上げ返済等で早期に負担を少なくするか、数年間分の生活費と返済額を貯蓄してリスクに備えましょう。

住宅ローン個別リスク診断

資産面から考えてみよう

最大の資産である住まいの資産価値を把握することは大切なことです。購入してもよい物件が見つかったら、その物件の市場価値をチェックしてみましょう。同地域の同程度の物件がいくらで貸すことができるか、また売却する場合にいくらで売れるのか、中古物件として極端に売値が下がってしまわないかなどをリサーチします。毎月のローン返済額と賃貸収入を比較して、万一の場合に貸し出しすれば、生活を立て直したり、当面維持したりできれば、その分リスクは少なくなります。市場性の高い物件かどうかも、「いくら借りられるか」に大きく影響するのです。

1,000万円の収入は低くはありませんが、先端を走る企業でも社会の変化によっては状況が全く変わるのがこれからの時代です。状況が変わっても自分たちが手にすることができそうな収入を目安に考えることも大切です。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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