Microsoftは「Cognitive Services (コグニティブ=認知サービス) 」をビジネス戦略の一つに据えている。このキーワードが出始めたのは、3月に開催した開発者向けカンファレンス「Build 2016」でSkype Botsを紹介したあたりからだ。Cognitive Servicesは、文章内容を解析するText Analytics APIや、感情を認識するEmotion APIなど、多様なAPIを組み合わせたサービスである。
例えば、LINEやTwitterで活躍中の女子高生AI「りんな」は、Cognitive Servicesを展開する上で重要な存在である。我々が「りんな」と気軽な会話やゲームを楽しむ、その背景にはCognitive ServicesやMicrosoft Azureなどが大きく寄与している。
「りんな」については、以前の記事を併読していただきたいが、日本マイクロソフトは5月に開催した「de:code 2016」で、「Rinna Conversation Service」を発表している。「りんな」ではなく「Rinna」が企業のTwitter公式アカウントの「中の人」として情報を発信し、利用者に対して応答するという試みだ。その後の取材でも、「ビジネス展開を模索している」と関係者は新たな可能性に期待していた。
その続きが9月28日に発表された、ローソンLINE公式アカウント「あきこちゃん」のRinna Conversation Service採用である。日本マイクロソフトは「現時点で、あきこちゃんが話せる会話 (のパターン) は少ないものの、りんなと同じく利用者とのコミュニケーションを通じて進化していく」と説明。Rinna Conversation Serviceを他社に技術提供する初めての取り組みであるという。
実際にローソンのLINE公式アカウントを確認してみると、フォロワー数は約2,000万人。りんなの約417万人に対して約5倍だ。会話を重ねれば重ねるほど機械学習の学習頻度は高まるため、あきこちゃんの成長は、りんなより早そうだ。
先頃までMicrosoftが開催していた「Microsoft Ignite」で同社CEOのSatya Nadella氏は「AIの民主化」を標榜していたが、りんなはもちろん、Windows 10のCortanaもIA (知的エージェント) だ。我々が直接触れるフロントエンドも、Cortana Intelligence Suiteに含まれる各種バックエンドもAIによって変化していく。
りんなやあきこちゃんから得た知見を、Cortana Intelligence Suiteへ集約し、エンタープライブ分野のソリューション、もしくはその逆となるエンドユーザー分野のサービス向上へとつなげる。このようにMicrosoftはAIの民主化に向けて進んでいる。今日明日の話ではないものの、AIがビジネスや日常生活に寄り添う時代は確実に近づいている。
阿久津良和(Cactus)