では、こうしたニューロネットワークを使ったパターン認識でどういったことができるのか、という話となるが、その端的な例として、NVIDIAはMail.ruとコラボレーションしてMail.ruが提供しているモバイル端末向けアート風動画エディター「Artisto」を、Pascalを活用することで、ニューラルネットワークアルゴリズムをベースにしたリアルタイムビデオストリームへと進化させた。この進化版Artistoは、あらゆる芸術家の画風を学習し、それを新たなアートスタイルにリアルタイムで適用していくことを可能とするもので、会場を映し出す映像をリアルタイムでピカソの画風に変換する、といったことを可能とする。同氏曰く、ニューラルネットワークのトリミングについてはTESLA P100で、推論についてはP40を活用して実現しているとしていた。
さらに同氏はIoTの普及を支えるGPU搭載組み込みシステムモジュール「Jetson TX1」や、自動運転の開発を支援する自動運転車両向けプラットフォーム「DRIVE PX2」などを紹介し、自動運転用OS「DRIVEWORKS ALPHA1」を10月末ころをめどに提供することを明言。以降も、数カ月おきにアップデートを進めていくとした。
気になるのは、今後のGPUの発展の方向性である。その点について同社は、16nm FinFETプロセスを採用し70億トランジスタを集積したAIスーパーコンピュータSoC「XAVIER(エグゼビア)」を9月末ころに開催したGTC Europeにて発表し、GTC Japan 2016でもその概要を語っている。このSoCは、次世代GPUアーキテクチャ「Volta」を512コア搭載するほか、8コアのカスタムARM64ビットCPU、新たなコンピュータビジョンアクセラレータ、そして2基の8K HDRビデオプロセッサを搭載するほか、ASIL Cレベルの機能安全も備えるものとなる。同氏はこれを「ディープラーニング、コンピュータビジョン、HPC-インテリジェントマシンといった技術の交差点向けに設計されたもの」と表現。DRIVE PX2を超す性能を1/4の電力(20W)で実現できるとした。
なお、同SoCは2017年第4四半期に、自動運転車を開発している自動車メーカー、ティア1サプライヤ、スタートアップ企業、研究機関などに向けて提供が開始される予定であり、同氏は、こうした取り組みを今後も進めていくことで、「すべての人のAIカンパニーになる」と宣言して締めくくった。