社会的な面からの課題は、データを扱う上でのコンセンサスの形成だという。現在は企業ごとにデータを保有しているが、活用を考えれば企業の枠を超えたデータ活用が必要であり、安全な活用のためのルールづくりや仕組みづくりが必要となる。すでにさまざまな形で対応がはじまっているが、今後はより広範に連携する取り組みが必要となって行くだろう。

経済的な側面では、大きな価値が試算されている。合理化・省力化の次には、新たなビジネス価値の創出、広範囲での最適化といった形で活用が進むと考えられる。一方でユーザーにとって利便性となるテクノロジー活用による効率化が、企業にとっては収入源につながる部分があるのが課題だ。これについて山本氏は「社会全体としてIoTを進めて行くには、このような課題を乗り越えて、投資がリターンにつながる好循環モデルを作っていかなくてはならない。解決策の1つとしては消費者と企業を1対1とするのではなく、複数のプレイヤーを巻き込んだビジネスモデルを作り出すことが考えられる」と語った。

IoT活用の3つの段階

社会活用を支えるIoT活用の方向性

また今後の社会動向として都市化・長寿命化・グローバル化という大きな変化が出てくることを指摘。世界に先駆けて超高齢化社会を迎えるなど早くから社会的課題に直面している日本は、IoTの恩恵を享受できる位置にあると語った。

技術的にも社会環境的にもIoT活用のリーダーとなれる素養がある日本が、2020年のオリンピック開催時にはIoT活用の進んだ社会を世界に見せられる側になろうという呼びかけも行った山本氏は「大切なのは人を中心に考えること。人工知能が発達し、ロボットによる自動化が進む時代だからこそ、人を支え、人のポテンシャルを最大限に発揮できるテクノロジーでなければならない。IoTの力で人を幸せにする、本当に豊かな社会を実現する。テクノロジーを生み出す側として、富士通はヒューマンセントリックを駆使してそれを追求して行きたい」と結んだ。