スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「センサーハブ」についてです。
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センサーハブとは、各種センサーICから入力したデータの処理を専門的に行うチップです。モバイル向けSoCに多く採用され、現在ではメインプロセッサ(CPU)を補助するコプロセッサとして実装されることが増えています。たとえば、iPhone 7の「M10」もセンサーハブの一種です。同様の機構は、Android端末に採用事例の多い「Snapdragon」など、他のモバイル向けSoCにも見られます。
携帯電話のチップは、信号処理を担う部分(ベースバンドプロセッサ)と汎用処理を担う部分(アプリケーションプロセッサ)に分かれていましたが、スマートフォンの時代となりGPUなどの機能も包含する「システム・オン・チップ(SoC)」として統合されました。一方、センサーを使い端末の状態を継続的に測定するには、SoCを常時オンにしなければならず、バッテリーのもちが重要なスマートフォンにとって消費電力が大きな負担になります。
そこに登場した機構が「センサーハブ」です。モーションセンサーや加速度センサー、近接センサーなどの情報をセンサーハブに流すことで、消費電力を抑えつつセンサーによる測定を継続することができます。センサーから受け取ったデータ処理専門という位置付けで、スマートフォンの多くが採用するようになりました。
ハブ(車軸)という名前ではありますが、現在ではセンサーからの情報を処理できるチップが登場しています。より消費電力の少ないチップが開発され、Apple製品に使われる「M9」や「M10」のように、センサーハブをSoCに内包する実装も増えています。
スマートウオッチなどのウェアラブルデバイスでは、センサーハブはより重要な役割を果たします。スマートフォン以上に低消費電力が求められるため、メインのCPU/GPUと使用するメモリを分離して外部アクセスを減らすなどの徹底的な省エネ対策が必要になるのです。今後センサーに頼る機能が増えるとすれば、ますますセンサーハブの省電力性能が重要になることでしょう。