Microsoftは毎月更新プログラムをリリースし、バグやセキュリティホールを修正しているが、9月のアップデートには注目すべき更新プログラムが含まれていた。Windows 10無償アップグレードに関するソフトウェアを削除する「KB3184143」がそれだ。

「GWX (Windows 10を入手する)」をはじめ、Windows 10への移行を望まない利用者にとっては最悪なプログラムを削除するというものだ。具体的には以下のプログラムが削除される。

  • KB3035583 GWXアプリのインストール
  • KB3064683 Windows 8.1 OOBEでWindows 10を予約
  • KB3072318 Windows 8.1 OOBEの更新
  • KB3090045 Windows 7 SP1/8.1用アップグレード予約済みデバイス向け
  • KB3123862 更新機能とWindows 7 SP1/8.1用アップグレード予約済みデバイス向け
  • KB3173040 Windows 7/8.1用無償アップグレード終了通知
  • KB3146449 IE 11更新機能とアップグレードに関する互換性修正

ちなみに「OOBE」は「Out Of Box Experience」の略で、利用者がPCを箱からだした状態から利用可能になるまで、つまり、Windowsを最初に使う際のセットアッププロセスを指す。今後はWindows 7/8.1を新規インストールして、更新プログラムを適用した後に、Windows 10へのアップグレードをうながされることはなくなる。

「GWX」の本体となるKB3035583。履歴の名称だけでは他の更新プログラムと見分けがつかない

Windows 10無償アップグレードについては、Microsoftの強引とも言える施策が多くの利用者に混乱を招いた。消費者庁は「Windows 10への無償アップグレードに関し、確認・留意が必要な事項について」という文章を発表。日本マイクロソフトも、サポートデスクスタッフの強化やGWXのUI変更など対応に追われ、平野拓也社長が「利用者に不便を強いてしまった。不十分で反省している」とコメントするに至っている。

消費者庁が発表したWindows 10無償アップグレードに関する文章(一部分)

一連の対応については否定論が強いものの、個人的には今回のKB3184143によって不要なプロセスやタスクが稼働しなくなる点を評価したい。筆者が確認したところ、「タスクスケジューラ」の「Microsoft/Windows/Setup/gwx」および「Microsoft/Windows/Setup/GWXTriggers」、「SystemRoot%\System32\GWX」フォルダーが削除された。いずれもWindows 7/8.1の動作を緩慢にするほどではなかったが、不要なものが動作しているのは決して好ましくはない。その一点において評価している。

KB3184143適用前のプロセスを「タスクマネージャ」で確認。GWXの設定を行うプロセス(ID4783)が稼働している

こちらは「タスクスケジューラ」の内容。GWX.exeを定期的に実行するタスクが登録されている

他方で評価できないのが、KB3184143の扱いだ。KB3184143は必ず適用対象となる「重要」「推奨」ではなく「オプション」に分類されている。確かに「オプションの更新プログラム」は、デバイスドライバーや新しいソフトウェアが含まれ、適用しないとバグやセキュリティホールを修正できないといった類ではない。だが、KB3184143は「推奨される更新プログラム」に分類されていた。

KB3184143は「オプション」に分類されるため、手動で選択しないと適用できない

更新プログラムの内容を確認してインストールする利用者であれば、オプションの更新プログラムだろうと、ナレッジベースを確認して適用できるが、PC初心者は適用してもよいか判断できない可能性が高い。MicrosoftがKB3035583をオプション扱いしたのは、利用者への配慮が足りないと批判されてもおかしくないだろう。

日本マイクロソフトは『愛されるWindows』を目指していると、事あることに発言している。だが、米Microsoftから同じニューアンスを持つ言葉は聞こえてこない。平野氏は「顧客の声を誠実に受け止めて、本社との連携体制を強化する」と述べているが、筆者は日米の温度差を感じてしまうのである。

阿久津良和(Cactus)