--今回、キーワードとして「異業種」、「ベンチャー」、「海外」の3つが掲げられています。また、カンファレンスとして「地方創生」という言葉も掲げられています。そうした点でも前述の"つながる"という言葉の意味に重みがでてきそうですが?

長尾氏:地方創生というのは、空いた工場で野菜を作る、といった類の話ではなく、製品とサービスの一体化モデルをいかに生み出すのか、という点にあると思います。農業や観光といった分野は現状、生産性がそれほど高くありませんが、IoTの活用で生産性を向上できることが見込めるようになりますので、そうした点に注目です。

CEATECのカンファレンスとしても、そうした地方での取り組み事例を見せるセッションなども用意しています。これまで、部品メーカーは最終セットメーカーを見てビジネスをしていましたが、IoT時代になり、その先のエンドユーザーを意識できるようになります。そういった姿も1つの"つながる"というポイントになってきます。

CEATEC JAPAN 2016の5つの見どころ。地方創生やビジネスマッチングといったものも含まれている

--キーワードの1つである"海外"も、ドイツをはじめ、イギリス、フランス、アメリカと各国のIoT関連動向の紹介を行うカンファレンスを用意するなど、かなり意識しているイメージがあります

長尾氏:ドイツは特に意識しています。日本と並ぶものづくり大国という認識です。そしてサービス分野の巨頭がアメリカで、この2国が連携を図ると、日本のものづくり産業は終わると見ています。しかし、一方で日本とアメリカが連携を強めるとドイツが孤立してしまうことになります。そういう意味では、日本が仲介役として機能することが最適ではないか、と考え、今回、政策を発信する場を設けました。どうしてもこれまで、そうした主催者側からの発信力が弱かったところがありました。今後、そこについては強化していきたいと考えています。

CEATEC JAPAN 2016が掲げる「異業種」、「ベンチャー」、「海外」といった3つのキーワード。海外との連携、特にドイツとの連携にはこだわりがあるのは上述のとおり

--新生CEATECとして、色々なことをやりたい、ということは分かりましたが、最終的にCEATECが向かうところはどういった物になるのでしょう? 長尾氏:数年後、エリアごとに、そこに関わる企業だけが集まって複合的な展示を行っている集合体ですね。言ってしまえば、百貨店形式で、1社が1つのブースで色々見せるのではなく、専門業者が集まって、新たな価値を見せる。そういった企業同士が共同で何かを見せるという、産業間連携を実現できる場にしたいと思ってます。農業とICTとか、製造業とSIerとか、色々あると思っています。地方創生の話でも少し出ましたが、IoTの進展がユーザー業界とのマッチングを実現しやすくして行きますし、世の中もそっちに向かっていくと思います。そういう点では、タスクフォースを組んで、ユーザー業界と産業界のマッチングなども推進できれば良いなという思いはあります。

--最後に、CEATEC JAPAN 2016に興味を持っている皆さんにメッセージをお願いします 長尾氏:競争できる分野を自ら作り出して行かなければ工業会としても存在できない時代になっています。それはJEITAとしても十分承知していて、それを実現するための1つの鍵を握るのがCEATECという存在だと考えています。CEATECが変わり、JEITAも変わる。出展者の皆さんも来場者の皆さんも一緒に変わって行っていただければと思います。

--ありがとうございました

インタビューを終えて

長尾氏の話を聞いていて感じたのは、変わらなければ終わる、という強い想いと、変革を推し進めるための強い意志であった。長年CEATECを見てきた側としては、デジタルテレビの大型化、高精細化などの波に乗っていた2005~2008年あたりをピークに、目新しさを感じられなくなっていき、そこから袋小路に入ったかのような閉塞感が漂い始めたと記憶しているが、今回の新たな方向性の提示が、そうした閉塞感を打破してくれることつながることを期待したい。

ただし、長尾氏の言葉にもあったが、産業同士がつながっていく、という点では、コンシューマの最新製品や技術を見にくる来場者の期待とは逆に乖離していくことになるように思える。とはいえ、CEATECは元々、Combined Exhibition of Advanced Technologiesの略であり、コンシューマもエレクトロニクスも入っていないことを考えれば、本来のさまざまな企業が最新技術を持ち寄る展示会、という立ち位置に戻ったとも言えなくもないだろう。そうした意味でも、企業同士が共同で何かを見せていく方向性にしたいという同氏の思いは、CEATECの基本を発展させていくものとも思える。新たな船出となるCEATECが、どのように変化していくのか、その試金石となるCEATEC JAPAN 2016は2016年10月4日から7日にかけて開催される予定だ。なお、CEATECはあらかじめPCやスマホなどから入場登録をしておけば、当日入場券(一般1000円/学生500円)を購入することなく入場できるので、同展に行ってみようと思う人は、事前登録を行っておくことをお薦めしておく。