既報の通り、レノボ・ジャパンは27日に10.1型2in1タブレット「YOGA BOOK」と、6.4型Androidファブレット「Phab2 Pro」の国内投入を発表した。これに合わせて都内で記者会見を開催した。

世界初の"Tango"搭載ファブレット「Phab2 Pro」

Anjana Srinivasan氏

説明会では、レノボ・グループ グローバル本社からAndroid & Chromeコンピューティング マーケティングディレクターを務めるAnjana Srinivasan(アンジャナ・スリニサバン)氏が登壇。まずは「Phab2 Pro」について紹介した。「Phab2 Pro」は6.4型ディスプレイ搭載のファブレットで、1,600万画素の背面カメラなどを搭載。約24時間の長時間駆動が可能。

「Phab2 Pro」の最大の特徴は、現実世界の空間や動きをデバイス内に取り込んで利用する「Tangoテクノロジー」を世界で初めて搭載したデバイスということだ。「Tangoテクノロジー」では、「モーション・トラッキング」「深度認識」「エリアラーニング」に必要なセンサやカメラを備え、デバイスがどういう場所にいるかを認識する。GPSによる緯度や経度情報だけでなく、部屋の広さや天井の高さといった情報などもデバイス側で取得し、AR(Augmented Reality:拡張現実)体験を実現できるという。

Phab2 Proの主な特徴。スライドの写真を見ると分かるが、背面にはカメラだけでなく、深度情報やエリアラーニング向けのコンポーネントを備える

「Tangoテクノロジー」を実現するために必要な3つのキーテクノロジー「モーション・トラッキング」「深度認識」「エリアラーニング」

「GPSはいまやスマートデバイスになくてはならない技術だが、"AR"はニッチな技術ではなく、誰もが日常的に利用するようなアプリでも使われるようになる。そのぐらいのインパクトがある」とSrinivasan氏は強調する。

ARはわれわれの生活に関連するさまざまなものに広く採用されるようになるという

「Tangoテクノロジー」のような技術によって、ARを実現することで、例えば家具を購入する際に「Phab2 Pro」で部屋の広さを測定し、買おうとしている家具のサイズがフィットするか、室内でどのように見えるかなどを視覚化できる。また、部屋の映像をバックに表示された生き物を観察したり、ARゲームなども可能だという。

買おうとしている家具が部屋に合うかどうか確かめることができる。「こうした機能はECサイトにとって大きな魅力になる」とSrinivasan氏。「Phab2 Pro」はコンシューマ用途だけでなく、業務向けとしても広く展開したいという

ゲームの例として室内でドミノ

博物館とコラボして恐竜を画面に表示して観察できる教育アプリ

説明会では「Tangoテクノロジー」を使ったゲームの例として、クリエイターの高橋慶太氏(代表作:塊魂など)が手がける「Woorld」が紹介された。

クリエイター 高橋慶太氏

一見、何の変哲もない部屋だが

カメラを通して見ると、ARでさまざまなオブジェクトが表示される

最初に部屋を測定。"?"となっている部分がまだ認識されていない部分で、デバイスを動かすことで認識する領域を広げる

オブジェクトを操作することで、さまざまな反応が得られる

現在、さまざまな企業が「Tangoテクノロジー」を用いたアプリやサービスに取り組んでいるとし、日本企業でも大日本印刷や凸版印刷、大塚家具などの名前が挙がった。「Phab2 Pro」は11月下旬の発売を予定し、価格は税別49,800円。

「Tangoテクノロジー」を使ったアプリやサービスを予定する企業

国内企業では、大日本印刷や凸版印刷、大塚家具なども

「Phab2 Pro」。6.4型と比較的大きな画面サイズだが、「Tangoテクノロジー」を生かしたアプリやサービスを考えて「まずはこのサイズから」という

背面がゆるいラウンド形状で比較的持ちやすい

ARのデモも披露

ペン入力対応でキーボードにもなっちゃうタッチスクリーン搭載の「YOGA BOOK」

続いて紹介されたのが、10.1型2in1タブレットの「YOGA BOOK」だ。ドイツ・ベルリンで開催された家電製品展示イベント「IFA 2016」で発表され、大きな注目を集めた製品だが、Srinivasan氏も「われわれの全力を注いだ製品」とアピール。入念な調査を繰り返し、開発に3年以上費やした自信作となる。

YOGA BOOK

Lenovoではタブレットがどのように生産的な活動に使われているか調査。平均的なビジネスパーソンでは、会社で資料作成など、家で電子書籍や動画を見たりといった形で、利用されているが、30歳以下の若い世代では1日中あらゆる場面でタブレットが使われているという結果が得られた。「YOGA BOOK」は、同社が「Touch Generation」と呼ぶ、子どものころから身の回りにタッチデバイスがあった若い世代を主なターゲットとした製品だという。

平均的なビジネスパーソンの利用傾向。大体お昼前くらいから夜にかけて使われている

30代以下の若者の利用傾向。1日中タブレットを使っている

Srinivasan氏は「若い世代における"生産性"とは何か」を考えることが重要だったと振り返る。生産的な活動というと資料作成などが浮かぶが、それだけではない。例えば学生であれば板書を写す、カフェで文書を作成する、電車で書籍を読む、明日の予定を立てるといったことも生産的な活動だ。「YOGA BOOK」ではこうした用途も想定している。

さまざまな生産的活動を想定する

「YOGA BOOK」で特徴的なのはまず薄さと軽さだ。レノボによると、10.1型の2in1デバイスとして世界最薄最軽量だという。紙のノートをテーマに、既存のYOGAシリーズでも用いられているウォッチバンドヒンジにより、ディスプレイを360度開閉することが可能で、ノートPC形状のほか、タブレット形状、テント形状、スタンド形状などのマルチモードで利用できる。

ディスプレイを開いた状態で4.05mm、閉じた状態で9.6㎜と薄型

ウォッチバンドヒンジで、柔軟にディスプレイの開く角度が調整可能。マルチモードで使える

本体の薄型化に大きく寄与しているのが、「Haloキーボード」と名付けられたタッチスクリーンで、キーボードに加え、デジタイザとしての役割も備えている。キーボードは、凹凸のあるいわゆる「普通のキーボード」ではなく、フラットなパネルにキーやタッチパッドの領域がプリントされており、利用時にバックライトにより浮かび上がるという仕組みだ。触覚的フィードバック機能を搭載し、キーを押したときに振動することで入力した間隔が指に伝わる。

フラットな「Haloキーボード」

ユーザーのクセを学習してキーが認識される領域を自動で調整する

また、学習機能により「あるキーを押すときにキーの右側を押す傾向がある」といったユーザーのクセを認識し、実際のキーをはみ出した部分にまで打鍵位置を自動で調整する。この機能にはThinkPadを開発する大和研究所のノウハウが投入されているという。このほか、スマートフォンで採用されているような予測変換機能を搭載し、通常のキーボードに迫る入力スピードと精度を実現するとしている。

一見「黒い板」に見えるが

切り替えボタンを押すことで、キーボードが浮かび上がる

一方のデジタイザは、ワコムの「feel IT technologies」をベースとしたもので、同梱する「REAL PEN」での入力に対応する。ペン先として通常のスタイラスに加え、ボールペン仕様のものを用意。

2種類のペン先を用意

ディスプレイやタッチスクリーンに直接ペンで入力できるほか、タッチスクリーン上に紙を置いて、その上からボールペン使用のペン先を付けた状態で書き込むことで、紙に書いた内容をそのままデジタルデータとして取り込むことができる。筆圧検知は2,048段階に対応する。

紙を置いて実際に書き込んだ内容をデバイス側に取り込める。オプションとして専用のノートパッドを用意するが、基本的に紙ならば何でも大丈夫とのことだ。ペン入力に対応したタブレットやノートPCでは、"紙と同じ書き心地"が求められるが、「YOGA BOOK」では間違いなく"紙と同じ書き心地"が得られる

「YOGA BOOK」は、Android搭載のWi-FiモデルとLTEモデル、Windows搭載のWi-FiモデルとLTEモデルをそろえる。直販価格はAndroid搭載のWi-Fiモデルで税別39,800円、同LTEモデルで税別44,800円、Windows搭載のWi-Fiモデルで税別52,800円、同LTEモデルで税別59,800円。

ディスプレイ部分はAnyPen対応。スタイラスでなくとも普通のペンや鍵など、先が細い導電性のものであれば使える

ウォッチバンドヒンジと相まって、リング綴じのノートに見えなくもない

なお、レノボ傘下のモトローラ・ジャパンもAndroidスマートフォンの新モデル「Moto Z」シリーズとその拡張キットである「Moto Mods」の国内販売を発表した。こちらについては海老原昭氏のレポートを参照いただきたい。

モトローラ、SIMフリースマホ「Moto Z」発表 - 「合体強化」を武器に日本市場で存在感を