本田技研工業の「フリード」とトヨタ自動車の「シエンタ」がしのぎを削るコンパクトミニバン市場。近年は販売台数でシエンタがリードしていたが、ホンダはフリードを全面改良し、巻き返しを狙う。年間10万台前後といわれるコンパクトミニバン市場は、新型「フリード」の登場でどう変わるのか。
フリードを8年ぶりに全面改良
コンパクトミニバンとは5ナンバーサイズで排気量は1,000cc~1,500cc、主要グレードが150万円~250万円程度のミニバンのこと。ミニバン全体の市場規模は年間50万台規模で、そのうちコンパクトミニバンが10万台前後売れているという。
現行のシエンタは、トヨタが初代シエンタを全面改良し、2015年8月に投入した2代目モデル。日本自動車販売協会連合会の統計を見ると、シエンタは発売以来、毎月1万台前後の販売数をキープしている。一方のフリードは発売から8年が経過しており、直近では月間販売台数が2,000台を割り込んでいる模様だ。
1人乗りシーンも考慮したデザイン
そんな状況のなか、ホンダが投入する新型フリード。“ちょうどいい”ミニバンとして人気を博したという先代フリードを進化させ、3列シート車の「フリード」、2列シート車の「フリード+」、「福祉車両」の3タイプを市場に投入する。エンジンは1.5リットルの直噴ガソリンエンジンとハイブリッドエンジンの2種類。ハイブリッド車の燃費では、シエンタのハイブリッドタイプと同等の1リットルあたり27.2キロを実現した。
燃費でシエンタに追いついたフリードだが、その他に差別化を図れるポイントはどこか。「アクセルを踏めば、元気のいいホンダの走りを感じてもらえる」。ホンダの4輪R&Dセンターで機種開発責任者を務める田辺正氏が、第一に挙げたのが“走り”の部分だ。大勢で乗るイメージの強いコンパクトミニバンだが、ホンダは平日に1人で乗るシーンについても考慮し、デザイン面では「遠くから見ると(ホンダの)フィットに見えるような」(田辺氏)感じに仕上げているという。
コンパクトミニバン市場で人気を二分するホンダとトヨタ。フリードの全面改良でシェア争いの行方に注目が集まるが、囃し立てる外野とホンダ社内には考え方に温度差があるようだ。
フリードVSシエンタ、シェア争いの行方は?
「(先代フリードから)乗り換えてもらいたい」。新型フリード発表会に登壇したホンダ執行役員の寺谷公良氏は、シリーズ累計58万台の販売台数を誇る先代フリードからの乗り換え需要に期待を示した。年間10万台前後といわれるコンパクトミニバン市場をトヨタと奪い合うよりも、市場そのものを大きくすることのほうが重要との想いがあるようだ。寺谷氏は「(新型フリードが)お客様に評価されればマーケットは拡大する。拡大させなければいけないと思っている」と新たなフリードの販売にかける意気込みを語った。
新型フリードの登場により、コンパクトミニバン市場におけるホンダとトヨタの勢力図に変化は起きるのか。それとも、寺谷氏の言うように、新型フリードがコンパクトミニバン市場自体を成長させるドライバーとなるのか。まずはフリードの出足に注目したい。