一人称+三人称視点のデモも

今回のテーマからはやや離れるが、「エンターテイメントの未来」ではソニーコンピューターサイエンスと山口情報芸術センターが協業した「VR鬼ごっこ」ともいえるコンテンツを通じて、複数視点同時投影「Parallel Eyess~視点交錯おにごっこ~」というデモを行っていた。名前でわかるとおり、複数の視点を同時に投影するというものだ。

簡易HMD(iPhoneかiPod Touch)を4名に装着させ、内蔵カメラの映像を投影して表示させるのだが、本人のみだけでなく4名の視界を画面4分割で表示させるというのがミソだ。鬼ごっこの場合、鬼の視界を確認して逃げるという事も可能であるし、鬼は他の人の視界をヒントに追いかける事もできる。ということで、「視界を隠してヒントを減らす」というのが逃げる方のポイントとなるが、一方「壁越しにチラチラ鬼を見て挑発」という事もできる。カメラが広角のため視野が広すぎて違和感を抱いたが、専用システムならば違和感は減り実用性もありそうだ。

VR鬼ごっこの体験中の4名。奥に見える赤い服の方が刀を持った「鬼」で刀が触れたら鬼交代

会場のプロジェクターで映された全員の視覚情報で、これが体験者のHMDにも表示されている。右上の赤にターゲットが見えるがこれが鬼の意味で、左下の青さんは右上の黄色さんの先に鬼がいる事がわかり、黄色さんはヤバいと思って急いで動いているので画像がぶれている。左下の緑さんは壁を見つめている事しかわからない

つまりこのように壁しか見ない事で鬼に位置情報を与えずにうまく隠れる事になる。ただし、近くに寄ってもわからないという難点あり

「電気」もブースデモあり

Hall9では「VR+電気」で二つの展示があった。一つは電通サイエンスジャムブースでは脳波をキャッチするという「脳波VR」で展示。デモはリラックス状態を作るカレイドセラピーを行っていた。

脳波VRのHMDのイメージモック。実際にはもっと簡易的な装置を使っていた

リラックス状態を作るカレイドセラピーの体験中

脇のモニターにリラックス状態をグラフ表示していた

もう一つはCEDEC2016インタラクティブセッション特別展示コーナーで電気を流して感覚を送り込むという大阪大学の「前庭電気刺激」。元々は医者が利用していたものを応用したということで、研究の結果左右、上下、回転の感覚が得られるものの開発が出来たそうだ。とは言え人体に電気を流すので、デモを体験するためには同意書にサインしなければいけない。

デモはHMDを装着して、ローラーコースター風映像を二回見せ、初回は電気刺激なし、二回目は電気刺激ありで効果を体感してもらうというもので、筆者的には「映像はイマイチだけど動きは感じるものの、ややピリっとした違和感も感じた」という感想で、実用はまだまだ先のように思える。

TGSに先立って行われたCEDEC(開発者向けカンファレンス)からの出張展示コーナー

大阪大学の前庭電気刺激と先に紹介した北海道大学はHall9に出展していた

前庭電気刺激そのものは以前からあるが、多くの表現を可能にしたのがこの発表のウリ。ただ、粘着式の電極にワニ口クリップで電線を付けて「電流を流す」のはちょっと抵抗がある

VR展示の弱点の克服という観点では色々なものが提案されていた。「HMDのケーブルの問題で移動が難しい」点に関しては背負うVR対応PC「VR One」をMSIが発表。量産試作までこぎつけ、かなりの小型化を実現。バッテリ2つで連続1.5時間動作(HTC VIVEの駆動込み)と意欲的だ

体験者をある程度増やす事に関しては半没入型ともいえるプロジェクター「Panoworks」をオリハルコンテクノロジーズが発表していた

あまり大型にしないことで、展示会の狭いスペースでも設置可能で、多くの人が見られるとアピールしていた