9月15~18日の期間、千葉・幕張メッセで開催されている「東京ゲームショウ2016」。15日・16日のビジネスデイにおいて、数多くの基調講演が行われたが、今回は初日に開催された「VRマーケットの展望」の模様をお届けする。
2016年は"VR元年"と呼ばれるほど、大きな注目を集めているVR(仮想現実)。ゲームプラットフォーマーやスマホメーカー、PCメーカー、IT企業などが提供するVRハードウェアの上に、映像やゲーム、インタラクティブコンテンツなど、さまざまなタイプのVRコンテンツが搭載され、本格的な展開が開始されている。本講演では、VR活用の先駆的な立場である、VRコンテンツメーカー、VRプラットフォーマーのキーパーソンが、今後VRマーケットが拡大していく上で解決すべき課題や技術、ユーザーニーズの動向、市場の展望などについてトークを行った。
基調講演前半は、VRソフトメーカーによるパネルセッションが行われ、カプコンの伊集院勝氏、セガゲームスの林誠司氏、バンダイナムコエンターテインメントの玉置絢氏が登壇した。
まず、テーマとなったのは、VRプロジェクトの難しさ。現在『バイオハザード7』をPlayStation VR完全対応で開発を進めているという伊集院氏は、「VR系のゲームをそのまま既存のタイトルにしても、まったくゲームにならない。操作性やプレイヤーの行動、演出、ゲーム性、ライティングにいたるまで全てを再調整する必要がある」と述べ、「同じ素材を使って、もう1本のゲームを作っているほどの労力」と明かした。
セガの林氏は『初音ミク VRフューチャーライブ』(10月13日発売予定)を例に「VRタイトルでは、ダンスモーションの一つをとってもウソがつけない。あらゆる方向からキャラクターをきちんと見えるよう調節するのに苦労した」とコメント。また、玉置氏は『サマーレッスン』(10月13日発売予定)を例に、「ただかわいいキャラクターを作って、VRの中で見ても人間らしく見えない」と明言。「我々は人間を見ながら生活しているので、少しでもおかしい動作があれば不自然に感じてしまう。『サマーレッスン』では、何気ない会話の中のやましい・うれしい・実は恥ずかしいといった細かな感情表現を、いかに作り込めるかが、もの凄く重要」と語った。
VRにおいてはずせないテーマといえば、VR酔いの問題。伊集院氏は「VR酔いは、少しずつの積み重ねで最終的に3D酔いがくる。そのため、酔いがくる前の段階を積み重ね、最終的にタイトルとして仕上げている」と説明。また、玉置氏は「VR分野はまだまだ発展途上。VR酔いは人によって感じ方が全然違うため、培ったノウハウはほかのタイトルでも共有できる。これから大勢の人のレビューを拾いながら、ノウハウを蓄積し、最善の方法を考えていかなければならない」と言葉に力を込めた。
そのほか、「VRの可能性について」のテーマでは、林氏は「今後は"多くの人との共有"がポイントになる。『初音ミク VRフューチャーライブ』では、1人で応援しているが、将来的には隣にいる観客がほかのユーザーになってくるのでは」とVRの可能性を伝え、伊集院氏も「バーチャル空間で1人ではなく大勢で楽しめる、コミュニケーションの強化した部分を前面に押し出したタイトルが登場するとゲームの世界が広がりそう」と同調した。
基調講演後半は、VRシステムの開発・販売を行っているFOVEのロクラン・ウィルソン氏と、HTCのレイモンド・パオ氏が登壇。ウィルソン氏は世界初となる視線追跡機能を備えたVR HMD「FOVE」を紹介。注目した視点のみを高解像度レンダリングすることでGPUの負荷を低減させ、全視野誤差1度以下、120fpsの高速操作を実現。さらにVR酔いも低減しているという。また、アイコンタクトによってバーチャルキャラクターとのコミュニケーションやさまざまなアクションが可能となっている。
また、パオ氏は、すでに発売している「HTC Vive」に対応した「VivePort」(現在β版)というソフトを公開。ゲームだけではなく、ショッピングやコミュニケーション、作成ツールなども利用できることをアピールした。
また、前半と同様、「VRの可能性」についてのテーマにも言及。ウィルソン氏は、「ゲームから始まり、今後は医療や教育にも実用化され、生活の一部になっていくだろう」とコメントし、パオ氏もそれに同意した。