「iPhone SE」などをはじめとした、4インチ台のディスプレイを搭載したコンパクトスマートフォンは、日本では根強い人気を誇っている。だが世界的に見ると、5.5インチ以上の大画面スマートフォンが増える一方、コンパクトモデルが激減しているのも事実。ドイツ・ベルリンで開催された家電の見本市イベント「IFA 2016」に合わせて発表された、ソニーモバイルのXperiaシリーズの新製品から、スマートフォンのコンパクトモデルの今後を考えてみた。
日本で根強い人気を誇るコンパクトスマートフォン
近頃のスマートフォンは大画面化が著しい。「標準的なサイズ」として提供されているスマートフォンは、かつては「大きい」と言われていた5~5.2インチのものが主流となっているし、最近では海外メーカー製のモデルを中心として、5.5インチクラスのより大きなディスプレイを備えた機種が急激に増えてきている。
その理由は、海外、特にスマートフォンメーカーが多いアジア圏においては、大画面である方が価値があるとされ、人気となっているからである。動画やゲームを楽しむ上では大画面の方が見やすく迫力があるのは確かであり、片手持ちに対するこだわりも少ない。それゆえASUSの「ZenFone Go」のように、性能は高くなくても5.5~6インチクラスのディスプレイサイズを採用し、なおかつ価格が安いモデルが重宝される傾向にある。
そうした世界的な潮流の中にありながらも、国内で根強い人気を誇っているのが、4インチ台のディスプレイサイズを誇るコンパクトモデルだ。今年発売された4インチディスプレイを採用したアップルのiPhone新機種「iPhone SE」は、現行機種の「iPhone 6s」ほどではないとはいえ、各種販売ランキングで上位に顔を出すなど、人気を獲得していることがうかがえる。
さらにシャープが今年6月、4.7インチのSIMフリー端末「AQUOS mini SH-M03」を投入しているし、9月6日にはNTTレゾナントが、「gooのスマホ」の第6弾として、4インチディスプレイを採用したSIMフリーのローエンドモデル「g06」を発表。Androidでも継続的にコンパクトモデルが投入されていることが分かる。
なぜ国内でコンパクトモデルの支持が高いのかといえば、それはひとえにスマートフォンの利用スタイルが大きく影響している。動画やゲームなどが注目されがちなスマートフォン上のコンテンツだが、最も利用頻度が高いのはコミュニケーションであるし、コミュニケーションに必須なのは文字入力だ。
そして日本のスマートフォンにおける文字入力方法は、片手で操作ができる「フリック入力」が主流だ。それゆえ片手で利用できることが重視され、結果としてコンパクトモデルが現在も一定のニーズを獲得しているわけだ。確かに近年、動画などの利用が広まっていることから大画面に対するニーズも高まってはいるが、海外のように大画面へと急速にシフトするのではなく、コンパクトモデルが根強い支持を獲得しているというのは、日本ならではといえる。