笑顔になったり大きな声を出したりしたとき、不意に口の端にひりひりとした痛みを感じた経験はないだろうか。気になって鏡でチェックしたところ、なにやら赤みを帯びていた場合は口角炎を患っているかもしれない。
文字を見ると、なんとなく口角炎の症状をイメージできるかもしれないが、他の似たような疾病と混同しやすいという特徴があるため厄介だ。
そこで本稿では、南青山皮膚科 スキンナビクリニックの院長である服部英子医師の解説をもとに、口角炎の症状や原因、他の疾患との見分け方について紹介しよう。
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口角炎の症状
まず、口角炎の症状について理解しておこう。口角炎は、ほうれい線の近くにある口角(上唇と下唇の接合部)に炎症が起きる皮膚疾患の一つで、主な症状は以下の通り。
■口角が切れて肌がカサカサになる
■口角に亀裂ができる
■口角が熱を持ち、周辺の皮膚が赤みを帯びる
■口角が切れてかさぶたになる
■しょうゆなどの刺激物が口角に触れると痛みを生じる
口の端である口角が切れると、食事をしたり笑ったりする際につらい痛みを伴う。こういった日常のささいなシーンに厄介な悩みをもたらす疾病と言えよう。
「発症後の治りが悪かった事例として、声楽をやっている方は治癒までに時間がかかったというのが以前にありましたね。(声楽で)口を大きく開けているので、治ってきたときに大きく口を開けてまた切れるといったように症状がぶり返していました。また、アトピー性皮膚炎がある人は口唇全体の乾燥や赤みといった口唇炎があり、それが原因で口角も切れるということがあります」。
口角炎の原因
口角炎の原因は複数あるが、カンジダという真菌(カビ)によって引き起こされるケースが多い。カンジダは皮膚に生息する常在菌の一種で、口の中や消化管、腟などで見られる。
通常は人体に悪影響を及ぼさないが、「疲労などで体の免疫力が下がってしまうと、常在菌であるカンジダが増殖してしまい、発症につながります。それと食事から摂取する栄養素が偏っていると口角炎になることがあります」と服部医師は話す。
食事面ではビタミンB2やB6、B12の不足で口角炎が起こりやすくなるため、これらの栄養素を毎日の食事から摂取することを心掛けたい。
ストレスも口角炎の原因になる
例えば過度のストレスは免疫力の低下を招くと考えられているため、ストレスをためないようにしたり免疫力の低下を招く行動をとらないようにしたりすることが口角炎対策として必須となってくる。
とはいえストレス社会の現代においてストレスフリーに過ごすのは至難の業。日常生活を送っていく中で疲れや睡眠不足、ストレスなどの生活習慣に由来するトリガー要素が蓄積された結果、カンジダが増殖して発症するというパターンが多いようだ。
「一度自分の生活や体調をみて、質の良い睡眠やバランスのとれた食事をとり、適度な休息で自分をいたわってあげることも重要です。また、治りを妨げるような行為『頻回に口角をなめる』『はがれる皮を無理にむしる』は慎むようにしましょう」。