オートデスクが開催する年次イベント「Autodesk University Japan 2016」が9月8日、都内で開催された。特別講演には"Pepper(ペッパー)の生みの親"として知られるロボット開発者の林要氏が登壇し、「GROOVE X の新世代ロボットコンセプト」と題し、現在開発中のロボットの展望をはじめ、次に求められるロボットの姿の持論を語った。

GROOVE X 林要氏

現在開発中のロボットは「Pepperとは対極的」

2015年秋に前身であるソフトバンクを退社して独立し、ロボットベンチャー企業のGROOVE Xを立ち上げた林氏。2019年の発売を目指し、現在はPepperに次ぐ新しいロボットを開発中だが、次に目指しているのは"ノンバーバル"なロボットだと明かす。

林氏は「家庭用ロボットは日本発の新産業になるだろう。しかし、多種多様なロボットが一斉に立ち上がっていく必要がある」と話し、Pepperが言葉と感情によるコミュニケーションが可能なヒューマノイド型ロボットであるのに対し、開発中のロボットはPepperとは対極的なものを想定しているのだという。

GROOVE Xが開発中の新しいロボットについて、現状明かされているのはシルエットと「ノンバーバル」(言葉を介さない)でPepperと対極であるということのみ

林氏によると、これまでのロボットを体系的に見た場合、2つの系統に分けることができる。1つ目が機能を重視したもので、人の仕事の代替や、コストの低減を目指したもので、アームロボットや自動運転車、ドローンなどが挙げられる。

そしてもう1つが感性を重視したロボットだ。精神的なサポートをすることで人間の能力の向上に役に立つもので、ドラえもんやペット的な存在のロボットがそれにあたる。

両者の大きな違いとして挙げられるのが"存在感の有無"だ。人の仕事を減らすためのいわば実用的なロボットには存在感は必要とされないが、人の自己実現を叶えるロボットはむしろ存在感こそが重要な価値となるのだと話す。

今求められているのは「ただ、隣にいるだけ」の存在

この2つの系統のロボットは時代とともに、必要とされる度合いが逆転してきていることを指摘し、林氏は次のように説明する。

「過去のロボットと言えば、100%が人の仕事を減らすためのもの。しかし、文明の進歩に応じて人は生きるためだけでなく、自己実現のためのものにどんどんお金や力を注ぐようになりつつある。そこに今はITが入ってきていて、未来のロボットは100%人の自己実現のためのロボットになるだろう」

これからのロボットは、「人間の仕事を減らす」のではなく、「存在感こそが価値」となる方向になっていく、と林氏

そんな中、これからのロボットに強く求められるのは"パートナー"としての存在。「例えばドラえもんや風の谷のナウシカ、スター・ウォーズといったアニメやSF映画の世界には、必ずと言っていいほどパートナーの存在が描かれている。彼らはただ主人公の傍にいるだけで、特に何かをするというわけでもない」と林氏。しかし、"ただいるだけ"という存在感こそがこれからのロボットには重要な要素だと予想する。