誰しもが好んで人から嫌われたくないはずだ。八方美人のように誰に対してもいい顔をして好かれる必要はないだろうが、自分の知人や友人、職場の人間など最低限の人に対しては、ある程度の好意を持たれたいのが本音だろう。
そして興味深いことに、最新の研究では社会的に孤立した人、すなわち人から好意を抱かれていない人は心臓発作や脳卒中の発病リスクが高いことが明らかになった。海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど、「人気と健康」に関するコラムが掲載されたので、その一部を紹介しよう。
今回実施された研究では、肝臓で作られ、血液凝固を助けるたんぱく質「フィブリノゲン」の数値に焦点が当てられている。私たちが深刻な負傷をした場合、そのたんぱく質の生成によって命が救われる。しかし、フィブリノゲンの数値の高い状態が長期間に及ぶと、心臓発作や脳卒中を招く危険な血栓のリスクが高まる。
研究チームはSNSに関する情報とともに、3,500人以上の男女から得たフィブリノゲン測定値を比較した。この際、友情が常に相互関係とは限らないため、「ある人物が友人と思っている人数」と「ある人物を友人と思っている人数」という2つのソーシャルデータを収集した。
その結果、参加者は2~32人の友人がいると言っており、その平均値は10人だった。対照的に、参加者のことを友人と思っている人は平均4人にとどまった。また、参加者が友人だと思っている人数の多寡とフィブリノゲンのレベルにはほとんど関連は見られなかった。
しかし、参加者を友人だと思ってくれている人がたくさんいると、凝固たんぱく質のレベルが低かった。対照的に、参加者を友人だと思ってくれている人がほとんどいない場合、血液中に多くの凝固たんぱく質が含まれていたという。すなわち、「自分は人気者だと思っていても意味がなく、自分のことを友人だと思ってくれている人が何人いるか」が重要だと示唆された。
the Royal Society journal Proceedings Bによると、最も人気のない人(他人に友人と認識されていない人)たちは、フィブリノゲン数値が喫煙者と同じくらい高かったという。友情が重要な理由を検証するためにさらに研究を進めることが必要だが、活動的な社会生活を送ることでストレスを発散させたり、友人同士で互いに健康に気をつけようと励ましあったりしていることなどが、今回の結果の理由としてあげられるだろう。
マサチューセッツ工科大学で行われた別の研究は、自分と他者との認識のずれも明らかになっている。同研究によると、相手のことを友人だと思っていても、相手も自分を友人だと思っている確率は50%だったとのこと。このような"誤解"が生じるのは「自分のことを好きだろう」と期待する人間本来の性格や、ソーシャルメディアによって友情の定義がぼかされたことなど、さまざまな理由がある。
どうすれば、他者との認識の不一致を解消でき、双方とも納得するような友情が芽生えるのだろうか。人が人と暮らす限り、永遠のテーマなのかもしれない。
※写真と本文は関係ありません
記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。