8月後半から9月前半にかけて、複数のMVNOが発表会を開催した。期変わりでもないのに、事業戦略発表会と題した報道向けイベントが開催されるなど、違和感の残る報道向け説明会も見受けられた。その理由を考えてみると、やはりあの存在がありそうだ。
各社がこぞって発表会を開催
8月末から9月にかけて、大手MVNO各社が発表会を開催した。インターネットイニシアティブ(IIJ)、mineo、楽天モバイル、LINEモバイル、NTTレゾナントだ。
この時期にMVNOの発表会が行われないわけではないが、今年は例年以上に発表会が多い。各社の報道向けイベントに顔を出せば、新サービスや事業戦略など、各社各様の方向性が見え、かつ個々の発表会にも意義を見出すことができる。それだけ今、MVNOが注目されており、勢いに乗れている証だろう。
しかし、ときには「プレスリリースだけでもよかったんじゃないのか」「この時期に事業戦略説明……?」などといった感想を抱いたイベントも見受けられた。新事業年度を迎えたわけでもないのに、今、事業戦略説明会を開催するのは、何かしら裏があるように思えてならない。
そんな素朴な疑問を解消しようとすると、答えはひとつしか見つからないのだ。それはアップルが発表すると見られる「iPhone 7」の存在だ。実際、LINEモバイルの発表会が9月初頭になった理由について、LINEの舛田淳CSMOは「近々、有名メーカーの端末が発売されるから」とコメントしている。各社がiPhoneを狙っているのは間違いないだろう。
MVNOを取り巻く環境は昨年と違う
特に今年にいたっては、昨年とは事情が違う。総務省の意向を踏まえて、スマートフォンの実質ゼロ円販売が事実上禁止となったからだ。これまではメモリの少ないモデルであれば、2年契約で実質タダ同然だったiPhoneだが、今年は利用者負担の増加は避けられないだろう。
コストメリットを追い求めるならば、初期投資はかかるものの、SIMフリーのiPhoneを手に入れ、格安SIMで運用したほうがいい。そう考える人が増えてもおかしくはない。使い始めて数カ月は大手キャリアとの契約のほうが経済メリットはあるが、長期になればなるほど「SIMフリーiPhone+格安SIM」のほうが出て行くお金は少なくなるのが一般的な傾向だ。
MVNOとしては、要はこうしたユーザーの受け入れるために、できるだけアップルの発表会の前に、自社の存在をアピールしておきたいのが本音だ。そこからすると、MVNOの発表会が相次ぐのは偶然ではなく、必然となる。新年度を迎えていようと、いなかろうとも、報道向け発表会はやったほうがいい。
モバイル業界において、9月は1年のなかでも濃厚な1カ月だ。例年、家電見本市のIFAが開催され、そこでAndroidの新端末が発表される。その後でアップルの発表会が行われ、発売日を迎えるまでに大手携帯電話会社も発表会を行い、新iPhoneの発売イベントでお祭り状態になる。そこに加えて今年からはMVNOも加わることになり、毎年9月はこれまでよりも、さらに濃厚な1カ月となりそうだ。