年度途中で転職というのも最近では珍しいことではありません。この秋から心機一転という人もいることでしょう。会社員の場合には、税金や社会保険に関しては会社任せでよくわからないという人も多いですが、転職するとこれらの扱いもいろいろと変わってきます。どのように変わって自分ではどんな手続きが必要なのか、転職前にきちんと整理しておきましょう。
転職したら健康保険や税金はどうなるの?
会社員の場合、社会保険料や税金は、毎月のお給料から天引きされる形で強制的に支払うことになっています。これらは収入によって額が決まりますので、転職することでお給料から引かれる額も変わってきます。
まず社会保険料ですが、これは健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の3つがあり、いずれも標準報酬月額という4~6月のお給料の平均額を元に計算されます。年度の途中で転職した場合には、転職先が届け出た標準報酬月額を元に新たに計算され、それに基づいて社会保険料がお給料より天引きされることになります。
標準報酬月額には基本給だけではなく交通費や残業手当など各種手当ても含んだ額となっているので、実際働いてみたら残業が多くてお給料が多くなったといった場合には、途中で標準報酬月額を見直すこともあります。その場合には、天引きされる社会保険料の額が数カ月で変わる可能性もあります。基本的には毎年4~6月のお給料から割り出された額が10月より1年間天引きされることになります。
また健康保険料は加入している健保組合によって保険料率が異なるケースもあるので注意して。保険料率の低い会社から高い会社に転職するとお給料の額が変わらなくても保険料がアップすることもあります。
転職後の税金の天引きは、住民税に注意して
お給料から引かれる税金は所得税と住民税があります。所得税は毎月のお給料総額から社会保険料などを差し引いた額に対して源泉徴収税額が決まっていて、その額だけお給料から天引きされます。住宅ローン控除や生命保険料控除など個別の控除などで税額が変わる場合には、年末調整で調整します。
住民税は所得税と違い前年の収入に対して税金が計算され、6月~翌年5月までの12回に分けて天引きされることになっています。そのため会社を途中でやめると前の会社の最後のお給料のときに払っていない住民税の残りを一括で支払わなければなりません。ただ、6~12月に転職した場合には、半年以上の分をまとめて払わなければならなくなるため、負担が重過ぎることから普通徴収という年4回に分けて支払う方法となります。
転職先の会社に住民税の支払いを引き継ぐことができる場合は、前の会社で届出書をもらい、転職先の会社に提出すると、お給料からの天引きを継続することができます。このようなことが可能かどうか、転職先の会社に早めに確認しておきましょう。
転職前後の手続きは何をどうすればいいの?
基本的に間を空けずに次の会社に転職する場合には、社会保険料や税金の手続きはほとんど会社で行ってくれます。退職のときに源泉徴収票や年金手帳など必要書類が手元にそろっているか確認し、転職先で書類を提出すれば難しい手続きはありません。
ただし、新しい会社に入るまでに少し期間をおく場合には注意が必要です。
転職するまでに1カ月以上の期間があく場合には、年金や健康保険の手続きをしておかないと空白期間ができてしまいます。退職してから再就職までの無職の期間は、基本的に国民年金と国民健康保険に加入することになります。これは住所地の市区町村役場に出向いて自分で手続きを行う必要があります。健康保険は任意継続という制度があり、保険料を全額自己負担することで、それまでの会社の健康保険を最大2年間継続することも可能です。任意継続を希望する場合には、会社で手続きできるのか健保組合に書類を送る必要があるのか事前に確認しておきましょう。
上述した住民税は一括徴収を選択せず年4回に分けて払う普通徴収にした場合も、会社が手続きを行ってくれるので特に窓口に出向く必要はありません。手続きが終わると納付書が自宅に送られてくるので、それに従って自分でお金を納めます。
社会保障などの手続きはふだん、会社任せなのであまり気にしたことがないという人も多いと思いますが、転職するときには職を変わるタイミングによって様々な手続きが必要になります。忙しさにまぎれて手続きを怠ると、いざというときに保障が受けられないことにもなりかねませんので、事前のチェックを忘れずにしましょう。
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堀内玲子
ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。