2016年9月2日、米労働省が発表した8月雇用統計は、(1)非農業部門雇用者数が前月比15.1万人増(市場予想18.0万人増)、(2)失業率が4.9%(同4.8%)、(3)平均時給が25.73ドルで前月比0.1%増(同0.2%増)、前年比では2.4%増(同2.5%増)という結果であった。

(1)非農業部門雇用者数は、市場予想を下回るとともに、増加幅は前月の27.5万人から縮小した。ただ、直近3カ月の平均増加幅は前月の19.0万人から23.2万人へと拡大しており、基調的な強さは維持した格好だ。

米非農業部門雇用者数と失業率

(2)失業率は、3カ月連続して4.9%で横ばいだった。改善基調には一服感もあるが、米国の雇用情勢は「完全雇用」に近いため、この先失業率が大きく低下する事はないとの見方は根強い。なお、8月は労働参加率も62.8%と前月から横ばいであった。

(3)平均時給は、前月の25.70ドルから0.03ドル増加。緩やかな増加基調は続いているものの、伸びとしては物足りないと言わざるを得ない。前年比の増加率は前月の2.7%から鈍化しており、個人消費のさらなる拡大やインフレ率の押し上げにはやや力不足との印象が拭えない。

米国平均時給

今回の米8月雇用統計は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ時期を読む上で大いに注目が集まったが、結果的には強い手がかりを示さなかった。「9月利上げの根拠としてはやや力不足だが、年内の利上げの可能性を否定するほど弱くもない」と市場は判断したようだ。ドル/円相場は、雇用統計発表直後こそ102円台後半までドル安・円高に振れたが、米国株が上昇して米長期金利も上昇する中で104円台前半へと切り返した。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya