東京メトロ日比谷線の新型車両13000系の報道公開が8月31日に行われた。1988年に登場した03系の後継となる、約30年ぶりの新車だ。

東京メトロ日比谷線の新旧車両。既存車両03系と新型車両13000系

東武スカイツリーライン(伊勢崎線)と相互直通運転を行う東京メトロ日比谷線は、これまで東京メトロの車両・東武鉄道の車両それぞれに3扉車・5扉車が混在し、ホームドアの設置にあたってこれをどうするかが課題になっていた。そこでドア数を4扉に統一し、ホームドアを設置させやすい車両として、東京メトロが導入するのがこの13000系だ。東武鉄道も仕様を共通化した新型車両70000系を導入する。

日比谷線の車両はこれまで18m車8両編成だったが、新しい13000系は20m車7両編成となった。東京メトロは今後、13000系による車両更新を進め、2020年度から2022年度にかけて、日比谷線にホームドアを設置する予定だ。

13000系の外観。前照灯にLEDを使用し、デザインに工夫を凝らしている

13000系の操舵台車。片軸が駆動軸となっている

車体側面上部に優先席・フリースペースの案内マーク

なぜ、18m車から20m車に統一することになったのか。3扉車・5扉車が混在している現状を解決しなければならないという事情がある一方、東武スカイツリーライン(伊勢崎線)内において、18m車と20m車の混在解消という課題もあるからだ。そこで東京メトロ日比谷線の車両も20m車にしたのだという。

今回、東京メトロと東武鉄道が同時期に車両の全編成を更新することになった。運転や保守の取扱いを統一することで運転の操作性や事故対応力の向上を図るため、主要な装置を同一の取引先に発注し、共通設計に取り組むことになった。18m車から20m車へ変更することで、設備面での対応も必要になってくる。どこが干渉するのかということも調べ、それへの対応工事も進めている。

「東京」を意識したデザイン、車内設備も充実

日比谷線・東武スカイツリーライン直通の一部車両に導入されている5扉車は、座れる席が少ないというデメリットがあるものの、通勤ラッシュ時に乗降をスムーズにし、多い立席で大量の乗客を運べるというメリットもあった。ただし、東京メトロ車両部設計課長の松本耕輔氏によれば、「混雑が5扉車の時代よりも緩和し、ホームの安全性の確保を考え、4扉にしました」ということだ。

今回導入される13000系では、車内設備の充実もポイントとなっている。既存車両と比べて優れているのは、車内放送の音質だ。ステレオ放送の音響はとても良く、松本氏も「高音質スピーカーでクリアな声が聴きやすくなっています」と語っている。

13000系の座席。座り心地はやわらかすぎず硬すぎず

吊り手の一部は高さを下げている

シートはやわらかすぎず硬すぎず、座り心地は快適である。ガラス荷棚には江戸切子の文様を入れ、「東京」を意識したデザインになっている。車内証明もLEDを利用した間接照明であり、落ち着いた印象をみせている。その他にも、3画面ディスプレイによる多言語情報の表示や、車両内無料Wi-Fiなどが導入されている。

13000系の定員は、先頭車140人(座席定員45人)、中間車151人(座席定員51人)、7両合計で1,035人。既存車両とそれほど変わらない。メカニズムについては、操舵台車を導入し、安全性と快適性を向上させている。前照灯にLEDを導入することで、視認性を高め、省エネにも役立っている。

各車両の車端部の座席は優先席に。フリースペースも設けられている

江戸切子の文様をあしらった荷棚

運転室。ディスプレイ上にアナログ風のデジタル速度計が表示される

東京メトロと東武鉄道が共通仕様の新車を導入することにより、日比谷線・東武スカイツリーラインの快適性が増すだけでなく、ホームの安全性も向上する。「"世代"と"文化"の交流」をキャッチコピーとした13000系は、日比谷線開業時の名車・3000形のデザインも意識しつつ、新しい時代の日比谷線を創り出すべく、走ろうとしている。