不登校までには至らないが、「学校へ行きたくない」とぐずったり、朝になると「おなかが痛い」と言ってきたり……。わが子が登校しぶりを始めたら、親としてどう対応すべきなのか。
約40年にわたり、病院の心理室やグループ相談室で子育てや不登校の相談を受けてきた心理カウンセラーの内田良子先生に話を聞いた。
登校しぶりのサインになる、体調不良の症状とは?
「登校しぶりは、まずひとりで学校へ行くのがつらいところから始まります」と内田先生は説明する。"朝スムーズに起きられない"、"朝食をしっかり食べられない"、"夜ぐっすり眠れない"。自宅でそんな様子が見られたら、要注意だという。
学校に行きたくないのに、それを言えない状態が続くと、体が無理だとサインを出し始める。つまり、体調が悪くなるのだ。登校しぶりで多い体調不良は、「おなかが痛い」「頭が痛い」「気持ちが悪い」がトップ3だという。
吐き気や発熱も多く、なかには39~40度の高熱を出す子もいる。また、足の痛みや右手の痛みを訴える子もいるという。足は歩いて学校へ行くためのもの、右手は字を書くものだからだ。
こうした症状は心の状態が体に表れる心身症状であり、共通しているのは、休めば症状が消えること。仮病が疑われるが、実際に具合が悪くなって苦しんでいる子がほとんどだそうだ。
2~3日休めば元気になって登校できる子も多い
子どもが学校へ行きしぶったらどう対応したらいいのか。 「どうすればいいかと聞かれたら、『体調が悪い時は休んでいいよ』と伝えてくださいと答えています」と内田先生。ただ注意したいのは、学校へ「行きなさい」と言うのも「休みなさい」と言うのも親の意思。親が主導権を握るのではなく、子どもが選べることが大切だという。
例えば、自宅や校門前でぐずっていたら、「あなたはどうしたいの? 」と聞いてみる。「そこで返ってくる答えが必ずしも正解ではないと思いますが、"親が心配して自分の状態に関心を寄せてくれた"という事実に、子どもは親の愛を感じます」。
頭痛や腹痛を訴える子どもに「学校どうするの? 」と聞くのは、「行きなさい」と言っているのとほぼ同じ。「そもそも優しさがないですよね。まずは、どのくらい具合が悪いのか、いつから頭が痛いのかなど、子どもの体調に関心を寄せてあげてほしい」。その上で、「気持ちが悪いなら、無理して行くことないからね。お母さんは休んでもいいと思っているよ」と伝えてあげてほしいとのこと。そうすることで、子どももだんだん自分の体の声を聞けるようになっていく。
初期のいじめや、先生の指導が厳しく緊張してストレスがたまっている場合など、2~3日お疲れ休みをすることで「また明日からいこう」と気持ちを切り替えられる子も少ないという。「休み癖がつくことはないですよ。理由があるから行きたくないのであって、子どもは楽しければ行きます」。風邪と同様、初期の段階でこじらせないことが大事だという。
登校しぶりの理由を親が分からないケースも多いが、安心して休めるようになって初めて、「実はね……」と話し始める子も多いのだとか。
内田先生は、「子どもには学校で学ぶ権利と共に、安心して休む権利があることも伝えてあげてほしい」と語った。やみくもに行かせようとするのではなく、親が子どもに一歩近づいて、一緒に考えていくことも大切。親としては学校に行ってほしいと思うかもしれないが、"自分がこの子の立場だとしたら、どうしてほしいだろう"と想像してみよう。
わが子が登校しぶりをしたら、親自身が焦ってしまうこともあるだろう。しかしそこは大きく構え、子どもを追い詰めるのではなく、率先して見守り、生きる力を与えられる親になりたいものである。
内田良子プロフィール
心理カウンセラー。子ども相談室「モモの部屋」主宰。40年以上にわたり、東京都内の保育所や保健福祉センター、民間病院の心理室などで、子育てや不登校の悩み相談を受けてきた。著書に「登園しぶり 登校しぶり」「子育てはなぞとき」等。