「ものづくり」にかける日本人の精神。それは今もなお、日本の製造業の根底に存在している。「1枚からでも顧客が要望すれば製造を受託します」と語るのは国内製造ならではの品質にこだわりをみせるプリント基板製造大手の「OKIプリンテッドサーキット(OPC)」だ。

OPC本社・上越工場の外観。横に非常に長いことが見てとれる。右は工場の入り口から撮影した画像だが、横から見ると、なおさらその長さが分かっていただけると思う

本社は戦国大名として知られる上杉謙信の居城、春日山城があった新潟県上越市にあり、地元の住民からは「OKIプリ」などと呼ばれ親しまれている同社。もともとはOKIが手がけていた電話交換機のプリント基板の製造からスタートし、1985年に上越市にて三菱化学が運営を始めた工業団地の一角を借用して新潟沖電気となり、1990年代に入ってOPCとなり自主事業会社としての活動を本格的に開始した。プリント基板の製造というと、中国や台湾に発注する、というのが最近の流れで、事実、国内のプリント基板市場も右肩下がりとなっているのだが、実は日本でもまだまだ名の知れた企業の事業の1つとして行われている。そうした企業の多くは、自社グループ製品の生産割合が高いのだが、OPCはOKIグループからの比率は14%(2015年度)と低く、そのうち半分がOKIが第4の事業の柱として育成中であるEMS事業(電子機器の受託生産サービス)からの発注とのことで、まさに独立独歩とも言えるビジネスを展開しており、その売上高も2008年のリーマンショックの影響で一時的に落ち込んだものの、2015年度には97億円まで回復し、100億円まで手が届くところまで来た。

2016年4月1日時点の従業員は545名(関連会社含む)で、本社工場の上越市と2015年に横河電機から取得した青梅工場で製造を行うほか、中国・江蘇省常州市にも設計部隊を配置している。そんな同社が得意とするのが、「高速」「高多層」「高精細」の3つの高付加価値基板の製造。売り上げの6割程度が8層以上、22層以上のみで見ても売り上げの2割を占めるほどだ。顧客も業種問わずで、通信系や情報系、航空系、医療系、果ては半導体製造装置(テスタ)と幅広く、海外からの注文も増えつつある。

OPCの顧客の業種。自動車、情報通信、FA、医療、半導体テスト、航空などノイズが致命的なミスを引き起こしかねない業界からの引き合いが多い。まだ海外比率は少ないとのことだが、徐々に引き合いが増えてきており、今後、海外取引の増加を狙っていきたいとしている

また、「顧客との図面のやり取りを円滑化することを目的として、CADデータのビューワを自社で開発。無償で提供し、設計に関するやり取りなども進めている」(同社技術本部の小池清 本部長)とするほか、高速伝送路の信号品質にこだわる顧客にはシミュレーションの実施による規格への準拠保証なども提供しており、顧客が求めるニーズに真摯に対応を図ることで、その満足度を高めることに余念がない。

そんな高付加価値基板へのこだわりは、同社が提供する技術にも現れている。例えば、HPC分野向け32Gbps/レーンを可能とする高速伝送プリント基板や、102層のリジッド配線板、0.35mmピッチのBGA対応基板と同仕様の0.3mmピッチ・800ピンBGA対応基板(26層)などの実用化が進められているほか、FR4のプリント基板の表層に放熱性の高い高熱伝導材を積層する「ハイブリッド基板」も2016年末には量産対応をできる予定とするなど、次々と新たな技術を生み出し続けている。「ハイブリッド基板は、高発熱の半導体デバイスに、安く対応したい、というニーズに対応することを目的に開発を進めてきたもの。表層のみ3W/mK基材を用いた場合で33%の温度低減を確認(8層:1.6mm)しており、これは全層に1.5W/mK基材を用いた場合の同等の効果となる」(同)ということで、主に高発熱のLSIなどで、従来のプリント基板よりももう少し放熱性が高いと設計の自由度が高まる、といったニーズへ手軽に対応することを目指している。

32Gbpsの高速伝送プリント基板の概要。今後、さらなる高速化対応を進めていく予定だという

100層超えをリジッド基板で実現。今後、さらなる多層化も計画しているという

0.3mmピッチで800ピンBGAに対応する高精細技術。今後、さらなる狭ピッチ化を図っていくことを予定しているという

2016年末には量産対応を開始したいというハイブリッド積層基板。コストをかけたくないが、放熱性をもう少し高めたい、というニーズに応えるソリューションとなる

102層の多層基板の見本。プリント基板というにはあまりにも分厚く、見応え?があるので、もし機会があれば、実際にその目で見ていただきたい一品であった

こちらは狭ピッチ多層基板の見本。こうした同社の技術力を示すプリント基板も展示されている