中澤氏は今回の実証実験の目的は「清掃車のIoT化」だと説明する。
「藤沢市の収集車はインターネットにつながっており、双方向通信が可能です。そのため、地震などの災害発生時に市役所から指示を出し、市内の被害状況を収集車を使って集めることができます。また平常時は、道路の白線の擦れ具合やペットの遺体発見に利用することも可能です。そのため、将来的に収集車にカメラを搭載することを考えています。このように収集車(あるいは公用車)をIoT化することで、市内のさまざまな情報を集めることが可能になります」(中澤氏)
今回の実験において、サーバとの通信には、ぷらっとホームが提供するIoTゲートウェイ「OpenBlocks IoT BX1」を利用した3G通信で行われている。ぷらっとホーム 執行役員 柴田裕信氏よれば、最近は、自治体によるIoT導入が増えており、とくに多いのが見守りサービスだという。
たとえば兵庫県伊丹市では、ビーコンを利用した児童・高齢者見守りサービス「まちなかミマモルメ」を導入している。
ゴミ収集車による環境データ収集は実験開始から3年半が経過したが、現在の課題は2つあると中澤氏は説明する。
1つはデータの精度だ。
「現在のセンサーは民生用なので、センサーごとにバラつきがあります。そのため、どうやってデータの信頼性を上げていくかが今後の大きな課題です」(中澤氏)
もう1つは、データの活用だ。データは慶應大学内のサーバに蓄積されているが、具体的にこのデータをどう有効活用していくかは、いろいろなアイデアを現在藤沢市と慶應義塾大学で協議中だ。
この点について中澤氏と一緒に研究を行っている、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任講師 米澤拓郎氏は次のように説明した。
「活用方法については、慶應大学と藤沢市さんでミーティングを重ねています。1つあるのはゴミの量をどう減らすかという取り組みです。市民の方が1日1gゴミを減らすと、年間で630万円の経費削減になります。IT推進課をハブにして、現在いろいろな課の方とミーティングを重ねています」
実際藤沢市では、20年後を見据えた取り組みも行っている。
「超高齢化社会を考え、高齢者が多い地域、若い世代が多い地域など、市内20カ所をピックアップしてゴミの重量を測定しています。これによって、今後、市内の年齢構成の変化によってゴミの量がどうのように変化するかを導きだそうと思っています」(藤沢市 環境部 環境事業センター 阿部英一氏)
また、動画を公開し、ゴミ分別の啓蒙にも積極的だ。
しかし瀧氏が、「現在行われている研究である程度実績が出てくれば、予算化して住民にサービス提供してくことを考えていますが、現在は研究の中間ポイントにあります」と語るように、集めた環境データの活用方法について、具体的な検討を行うのはこれからだ。
活用方法について中澤氏は、「たとえば、ゴミ収集車に通信用のWi-Fiルータを搭載することによって、現在利用している業務用無線が不要になるなど、市の支出が減るという効果が一番説明しやすいと思います。また、PM2.5や花粉情報を公開することによって、花粉症が減ったという効果を出す方法もあるでしょう。情報は宝で、これをどう処理すれば役に立つ情報が生まれ、どう見せれば市民の行動がより健康に、より安全な方向に変わるかを考える必要があります。理想をいえば、そういったアプリを誰でも作れるようになればいいと思います」と、オープンデータとして公開し、民間に活用してもらうことも視野にいれていることを明らかにした。
今後、両者がどのような活用法を採用するかが楽しみだ。その有効性が広く認知されれば、他の自治体にも利用が広がっていくはずだ。