米Intelは30日(現地時間)、開発コードネーム"Kabylake"で知られる第7世代Coreプロセッサを発表した。まずはTDP 4.5W~15Wの低消費電力モバイルプラットフォーム向けから提供を開始し、9月上旬にも主要ベンダより搭載PCが出荷されるという。

クライアントビジネスを統括するナビン・シェノイ氏(Navin Shenoy:General Manager, Client Computing Group)がKabylakeのウエハを披露

"Kabylake"は、前世代の第6世代Coreプロセッサ(開発コード名:Skylake)と同じマイクロアーキテクチャをベースに、Intelの改良版14nmプロセスである"14nm+"を採用した製品となる。まずはモバイル向けのプロセッサから投入する。ラインナップは下記の表のとおり。

Core mプロセッサはm3のみ、また4.5W TDPのYシリーズは、Core i7/i5/m3の構成となり、3.5W~7WのレンジのcTDP(Configurable TDP)に対応する。さらに、TDP 15WのUプロセッサは、7.5W~25WのレンジでcTDPに対応する(CPUごとに対応範囲は異なる場合がある)。

Yプロセッサの基本スペック
プロセッサ名 Core i7-7Y75 Core i5-7Y54 Core m3-7Y30
コア数/スレッド数 2/4 2/4 2/4
動作周波数
(ベース/ブースト)
1.3GHz/3.6GHz 1.2GHz/3.2GHz 1GHz/2.6GHz
Turbo Boost 2.0
メモリインタフェース デュアルチャネルDDR3L-1600/LPDDR3-1866
Hyper-Threading
Active Management Technology 11.0 ×
TSX-NI ×
Intel Security Key
価格(1,000ユニット時の単価) 393ドル 281ドル 281ドル
Uプロセッサの基本スペック
プロセッサ名 Core i7-7500U Core i5-7200U Core i3-7100U
コア数/スレッド数 2/4 2/4 2/4
動作周波数
(ベース/ブースト)
2.7GHz/3.5GHz 2.5GHz/3.1GHz 2.4GHz/ -
Turbo Boost 2.0 ×
メモリインタフェース デュアルチャネル DDR3L-1600/LPDDR3-1866/DDR4-2133
Hyper-Threading
Active Management Technology 11.0 ×
TSX-NI ×
Intel Security Key
価格(1,000ユニット時の単価) 393ドル 281ドル 281ドル

第7世代Yプロセッサ

第7世代Uプロセッサ

14nm+プロセスの採用で性能向上

"Kabylake"では、プロセス技術の改良と製造技術の成熟により、省電力性能の向上とパフォーマンスアップを実現。プロセス技術の進化だけで、同じ消費電力であれば最大12%の性能向上を果たしているという。

Kabylake最大の特徴は、14nm+プロセスの採用による性能向上だ

Kabylake世代では、第1世代Coreプロセッサに比べて、消費電力あたりのパフォーマンスが10倍に

5年前のPC環境と比較すれば、一般的なOfficeアプリケーションなどでは70%以上の高速化、4Kや360°ビデオ制作などのコンテンツクリエーションでは8倍以上のパフォーマンスアップが可能になるとアピール

Intel シニア・フェローでプロセス技術開発を担当するマーク・ボア氏(Mark Bohr)氏によれば、14nm+では、ゲート電極間隔を狭め、リーク電力を低減するほか、3Dトランジスタのフィン構造の改善などにより、従来の14nmプロセスより高性能化が可能になったという。

Kabylakeのウエハ

モバイル版Kabylakeのダイと各機能の配置

Kabylakeは、この14nm+プロセスを採用する最初の製品となる。CPUコア部は現行のSkylakeと同じながら、「スキン温度制御なども、よりアグレッシブに行なうことでTurboBoostの持続時間も延ばすことができ、一般的なオフィスアプリケーションの性能であれば、プロセス技術の進化度を上回る19%の性能向上を果たすことができる」と、Intelでモバイル製品事業を指揮するクリス・ウォーカー氏(Chris Walker:General Manager, Mobile Client Platform)は説明する。

Intel Speed Shift Technologyにより、短時間にCPUクロックのブーストを可能にし、一般的なアプリケーション処理のパフォーマンスを向上させることができる

SkylakeとKabylakeのWebXPRT 2015によるパフォーマンス比較

SkylakeとKabylakeのSYSmark 2014によるパフォーマンス比較

実際、Intelが公開したKabylakeのスペックをSkylakeと比較すると、ベースクロックが若干アップしているだけでなく、Turbo Boost時の最大動作クロックが400~500MHzアップと、大幅な向上を果たしており、パフォーマンスに対しても大きく影響することが見て採れる。

第7世代と第6世代モバイルプロセッサの比較
プロセッサ名 Core i7-7Y75 Core m7-6Y75 Core i7-7500U Core i6-6500U
開発コード名 Kabylake Skylake Kabylake Skylake
コア数/スレッド数 2/4 2/4 2/4 2/4
動作周波数
(ベース/ブースト)
1.3GHz/3.6GHz 1.2GHz/3.1GHz 2.7GHz/3.5GHz 2.5GHz/3.1GHz
Turbo Boost 2.0
メモリインタフェース DDR3L-1600/LPDDR3-1866 DDR3L-1600/LPDDR3-1866/DDR4-2133
Hyper-Threading
Active Management Technology 11.0
TSX-NI × ×
Intel Security Key
価格(1,000ユニット時の単価) 393ドル 393ドル 393ドル 393ドル

動画関連の機能が大幅に強化

一方、グラフィックス機能は、Kabylakeでメディアエンジンが一新され、4Kビデオ支援機能や、HEVC(H.265)10bit対応などが追加された。これにより、米国で2016年後半から提供が開始されるHEVC 10bit対応の4Kプレミアムコンテンツを、バッテリ駆動下でも9.5時間の長時間にわたって再生できる"All Day 4K"を実現するとともに、YouTubeなどのVP9形式の4Kビデオまたは4K 360度ビデオ再生でも7時間の再生を実現する。

Kabylakeのグラフィックスコアは、Skylakeと同じ第9世代のグラフィックスアーキテクチャをベースとしつつ、メディアエンジンを一新

メディアエンジン内のMFX(Multi-Format CODEC)では、10bitのHEVC & VP9デコード機能に加え、10bit HEVCと8bit VP9エンコード機能などを追加。また、Quick Sync Videについても機能強化が図られている。また、VQE(Video Quality Engine)では、10bitコンテンツのトーンマッピング変換に向けた強化が施されている

Skylake世代とKabylake世代のメディア機能比較。4K HEVC 10bitのエンコード/デコード機能と、VP9デコード機能が追加されている

ディズニーの4K 360度マルチストリーミングコンテンツなど、今後登場する4Kコンテンツへの対応も万全だという。実際にいくつかのデモが披露され、4K HEVC 10bitビデオ再生では、Skylakeが平均10.2Wの電力を必要するのに対し、ハードウェア支援機能を搭載したKabylekaでは、わずか0.5Wの平均消費電力に抑えることができ、同じシステム環境であれば最大2.6倍のバッテリ寿命を実現するとしている。

Kabylakeにおけるビデオ機能のパフォーマンス

SkylakeとKabylakeの4K HEVC 10bitビデオ再生時の消費電力推移比較

SkylakeとKabylakeの4K VP9ビデオ再生時の消費電力推移比較

最新4Kコンテンツを、バッテリ駆動時も思いっきり楽しめるとアピール

また、この4K対応は再生環境だけに留まらない。Kabylakeでは、HEVC 10bitの4Kエンコード支援機能も搭載し、4Kビデオカメラで撮影した動画データの編集や変換に対しても大幅なパフォーマンスアップをもたらす。Intelによれば、複数の4Kビデオを4分間のコンテンツにまとめるデモを披露。従来は、一晩かかった4Kエンコードも、CPUへの負荷をかけることなく、短時間に終えられるようになると説明する。

複数の4Kビデオをベースに、30秒間のビデオクリップを編集する場合でも、4K HEVCエンコード支援により、リアルタイムで処理が可能になるという

薄型ノートPCでも最新FPSがプレイ可能

また、3Dグラフィックス性能についても、14nm+プロセスを採用するメリットは大きいという。説明会では、TDP 15W版のCore i5を搭載したDELLの次期XPS 13で、最新ゲームタイトル「Overwatch」をプレイするデモを披露。HDミディアムセッティングで、100%のレンダースケーリング、フィールド・オブ・ビュー最大の環境で、コンスタントに30fps以上のフレームレートでプレイ可能で、外出先でも最新ゲームタイトルを楽しめるとアピールした。

Overwatchの動作デモに用いられたDELLの次期XPS 13

Kabylake内蔵グラフィックスによるOverwatchのデモでは、30fps以上のフレームレートでプレイ可能だと示された

HPのKabylake搭載ノートPCとRazerのThunderbolt外付けグラフィックスカード拡張ボックスを用いれば、Overwatchの描画品質やパフォーマンスも大幅にアップするとアピールするクリス・ウォーカー氏(写真右)

Intel Developer Forum 2016期間中に開催された製品説明会では、ASUSTeK ComputerやDELL、HPのKabylake搭載PCも公開されたが、その詳細スペックは明らかにされていない。

Kabylake搭載のHPの次期SPECTRE

HPの次期Envy x360は、Kabylakeを搭載し、4K対応の15インチ液晶を搭載する回転式の2-in-1モデル

Kabylakeを搭載するASUSの次期ZenBookと思われるクラムシェル型PC

Kabylakeを搭載するASUSの着脱式2-in-1モデルTransformer T305は、本体の厚さが6.9mmで、重量はわずか700gだと言う

また、Kabylake搭載PCが潤沢に供給されるようになるのは、2016年のクリスマス商戦機であり、さらにデスクトップやワークステーション、高性能ノートPC向けCPUは2017年1月の供給になる予定であることも明らかにされた。

Kabylake搭載PCでは、より多くのThunderbolt対応モデルが投入される予定になっているほか、Windows Hello対応モデルも大幅に増える見通しだ

Kabylake世代では、より薄く、個性的なモバイルPCが登場する

100以上のモバイルノートPCが2016年第4四半期に投入予定。さらにデスクトップやワークステーション、高性能ノートPC向けCPUは2017年1月に提供されるという