こんにちは! 広告写真家の熊谷直夫です。今回は、人物の「視線」にこだわって、ちょっとオシャレでドラマチックなポートレート写真を撮るコツを解説しましょう。家族や友人、恋人などを撮る際に役立つかもしれません。サブテーマは、ズバリ「脱・記念写真」です。
カメラ目線を外して「脱・記念写真」を目指す
まずは1枚目の写真を見て下さい。とある高校の校舎を借りて撮影した女子高生の立ち姿です。年季の入った廊下や窓枠を大きく写し込みつつ、小道具にフルートを使って清楚なイメージを演出。「昭和」を感じさせる懐かしい雰囲気を狙ってみました。
こうした雰囲気を写真に与えるための重要なポイントは、構図でしょうか、光線でしょうか、それとも露出や絞り値といったカメラの設定でしょうか? どれも大切な要素ですが、最重要ではありません。ポートレート写真で特にこだわるべき点は人物の「表情」。そして、表情を大きく左右するのが「目線 (視線)」です。
同じ場所で撮影した、もう1枚の写真と見比べると、目線によるイメージの変化がよくわかると思います。
人物の視線の先を窓の外から、カメラ目線に変更しただけで、全体の雰囲気がガラリと変わり、まるでアイドル写真のような印象になりました。これはこれで悪くないかもしれませんが、懐かしい雰囲気漂うポートレートという狙いとは少し異なります。
こうしたカメラ目線の撮り方は、非カメラ目線に比べると、見る人の意識を引き付ける吸引力があるため、アイドル写真やグラビア写真にも多用されます。しかし一方で、記念写真のような味気ないイメージになりやすい傾向もあります。
特に、プロモデルはではない一般人を被写体にした場合、カメラマンが何も指示をしなければ、ありふれた記念写真風になりがちです。ポートレート作品を目指すなら、「レンズを見ないで、窓の外を見て」といったひと言を用意しておきたいものです。
上のカットも、カメラ目線を外して撮った作品です。駅のベンチに座ってもらい、ひとり旅のようなシーンを作ってみました。目線を遠くに向けることで、見る人に画面外にある風景を想像させたり、これから始まるドラマを感じさせるような効果が期待できます。
次は、永遠の憧れである「ピアノ女子」をモチーフにした写真です。ここでは楽譜を使いましたが、何か小道具を用意し、そこに目線を向けるのも雰囲気作りに効果的です。
最後は、雨滴を生かしたポートレートです。目線の先に広い空間を空けて、そこに曇り空と水滴を写し込むことで、物思いにふけっているイメージを表現しています。こうした目線外しの写真は、外した先に何を置くか、外した先に空間を空けるか否かも重要なポイントといえます。
今回紹介した「目線外し」のテクニックは、ポートレート撮影の基本テクニックのひとつです。特別な機材は何も要りません。ぜひ気軽に試してください。
(モデル:杉村陽子)