NTTドコモがコンビニ大手のローソンと新たな分野で手を組んだ。ドコモの子会社でサイクルシェアリングサービスを営むドコモ・バイクシェアを加えた3社が共同でサービス提供に取り組み、ローソン店舗で自転車の貸し出しを行う。今回の業務提携は3社にどんなメリットがあるのか。サイクルポートの設置でコンビニの風景は変わるのか。

青森県内4店舗でスタート

業務提携による最初の取組みとして、8月23日から青森県内のローソン4店舗で自転車の有料貸し出しサービスがスタートする。1店舗につき5台、計20台という小規模でのスタートとなるが、将来的には全国のローソンでのサイクルポートの設置も検討しているという。

都内では自治体と組みサービスを提供

ちなみに、青森県内での取り組みは、復興庁が東北への外国人旅行客の送客を支援する『「新しい東北」交流拡大モデル事業』の一環に位置づけられる。ただし、利用者自体に制限はなく、日本人も利用可能だ。利用プランには1日パスと3時間パスがあり、料金は前者が1000円、後者が500円。ドコモケータイ払い、もしくはクレジットカードでの決済となり、決済手段の多様性からは、日本人も想定したサービスとして考えたほうがよさそうだ。

3社にメリットは?

では、業務提携3社には、どんなメリットがあるのか。ドコモ・バイクシェアは貸し出し件数の増加が収益増大につながるだろうが、ローソン、ドコモにはメリットがあるのか。まずはローソンから。

ローソンはサイクルシェアリングサービスを集客材料のひとつと考えた。観光地であれば都市部に比べて移動手段に限りがあることから、ひとつの集客材料として成り立ちそうだ。自転車のレンタル、返却時の2つの局面で、食べ物、飲み物の購入機会も増えることも想定される。

次はドコモだ。ドコモにしてみれば、ドコモ・バイクシェアの収益アップだけでもメリットがあるが、他にもある。それは昨年5月にドコモとローソンが相互送客などを目的として締結した業務提携だ。同業務提携では、12月から開始したドコモのポイントプログラム「dポイント」のローソンでのポイント付与、利用などについて規定されている。つまり、ローソンの利用者が増えることで、dポイントの活性化につながる効果も見込まれる。

コンビニの風景を変えるか

今回の業務提携は3社にメリットがあるものだ。そして、それは全国展開を図ることでより高まるだろう。それにより、全国のローソンにサイクルポートの設置されれば、コンビニの風景も変わりそうだ。今後の展開について、ドコモ、ローソンは次の立地や対象ターゲットについては未定としているが、単純に全国展開が図られるとも思えない。今回の青森県内での取組みが成功すれば、他の観光地への展開も考えやすくなるものの、観光地以外でのサービス提供を考えた場合、そこにどれだけの需要があるかは未知数だからだ。多くの人にとって日常生活を送る上での交通手段は確保しているはずであり、入り込む余地は少ないと考えられる。そのことからすれば、住宅地付近のローソンに自転車が設置される可能性は低そうだ。

ただし、ドコモ・バイクシェアは面的広がりよりもエリア密度を重視した戦略をとっており、東京都内4区での相互利用の実証実験を開始するなど、都心部でのサービス提供を重視してきた。そのことからすれば、郊外ではなく東京都心部のローソンを活用したサービス展開はありえるかもしれない。