「宮崎でワイン? 焼酎でしょ?? 」と、思う人が多いのではないだろうか。それもそのはず、宮崎は台風が通り降水量のとっても多い場所。なんでこんなワインにとって過酷な条件の場所にワイナリーを作ったのだろうか。それも、聞けばワイン業界でも有名なワイナリーなんだとか。どんなこだわりが詰まっているのか、「都農(つの)ワイナリー」(宮崎県児湯(こゆ)郡)の秘密に迫ってみた。
都農ワイナリーの"松平健"の苦労
児湯郡の都農町に位置する都農ワイナリーの存在を教えてくれたのは、ソムリエ・田崎真也さんの愛弟子、ソムリエでありシャルパンティエのオーナーでもある藤森真さんだった。この都農ワイナリーは、世界的に権威のある世界のワイン図鑑『THE WORLD ATLAS OF WINE』にも名が刻まれている。
「宮崎の過酷な状況で、わずか10年で国産ワインコンクールにて最優秀カテゴリー賞を受賞。それも、金・銀・銅を総なめにする快挙を達成。そんなワイナリーを見に行かない? しかも、醸造家は松平健に似ているよ」と藤森さん。キャッチー過ぎる! すぐさま飛行機のチケットを押さえた。
「日向灘を一望できるこの景色にほれ込んじゃったんですよ。この高台の場所ありきでスタートしました」(赤尾さん)。
サラッと言ってくれるが、年間降水量4,000mmは世界のブドウ産地と比べても5~8倍の降水量。高温多湿の宮崎で、欧州産のブドウが栽培されていること自体が奇跡に近い。ビニールトンネルを作って雨を当てないようにしている他、排水対策や防風林の植樹も完備。本来であればしなくてもいい苦労をしてまで、都農にこだわり、都農の風土を反映するブドウを育ててきた。
赤尾さんに醸造の工程を説明してもらうため、建物内部に入ると、かわいいワイナリーの外観からは想像もできない近代的な設備が整っていた。都農ワイナリーでは、醸造家が案内するツアーを無料で実施している。ブドウ園から蔵、ワインセラー、カフェ「都農ファームカフェ」を巡り、カフェでは有料でテイスティングも可能。ツアーは1回60分で、事前予約が必要となる。
「宮崎の風土を映すお酒を」
10月に新酒の赤とロゼをスタートさせ、翌年2月に赤のエステート(自社農園栽培のブドウを醸造したワイン)とアイスワイン、3月にはタンク熟成の白、4月末から5月にかけて樽熟成させた白を。ブドウ農家として自然と闘いながら、醸造家としてもリリースしていくこのスケジュールは、本当にワイン造りが好きじゃないとできないと実感させられた。
「ワインだって地酒なんです。この土地で育った食べものとこの土地で育った人々と、この土地で育ったブドウのお酒はマリアージュには必然性があると思っています。宮崎の風土を映すお酒として、食とワインの提案もしていきたい」(赤尾さん)。
宮崎名物のチキン南蛮の南蛮酢は甘酸っぱい。特に、ワインのキャンベルは甘いといっても酸味もしっかりしているので、チキン南蛮と相性がとてもいい。フランスの大地で育った食べものと、その大地で育ったブドウのお酒がいい相性をみせるのと同じ関係図が、ここにもある。
ちなみに、チキン南蛮は併設の都農ファームカフェでも食べられる。オススメのマリアージュワインがメニューの横に書いてあるので、訪問した際にはぜひチャレンジしてほしい。都農ワイナリー&都農ファームカフェへは、JR日豊本線「都農駅」から車で10分となる。
藤森さんも何度も足を運び買い付けているというこの都農ワイナリーのワインは、生産量がまだまだ少なく、受賞によって有名になってしまったとのことで、実は都内になかなか出回らなくなっている。すぐ完売表示が出てしまうのでお早めにどうぞ。
●information
都農ワイナリー
営業時間: 9:30~17:00
定休日:年中無休(年末年始を除く)
都農ファームカフェ
営業時間: 11:00~16:00
定休日: 火曜日(祝日の場合翌日)
※記事中の情報は2016年7月取材時のもの