公正取引委員会は8月2日、「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という報告書を公開した。その内容を見ると、キャリアだけでなく端末メーカー強く意識した課題点もいくつか挙げられているようだ。この報告書で最も大きな影響を受けるのは、一体誰なのだろうか。
一見するとタスクフォースに沿った報告書だが……
昨年末に総務省のICT安心・安全研究会が実施した「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の結果を受け、今年に入ってから行政による、携帯電話市場の商習慣見直しが急速に進められている。
タスクフォースの結果を受けて4月には「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」の適用を開始。それを基に総務省が、これまで一般的だった、"実質0円"など携帯電話端末を大幅に割り引く大手キャリアの販売手法に対して厳しい指導を実施するようになったことから、キャリアの実質0円販売が大幅に減少することとなった。
だがタスクフォースの結果を受け、行政が携帯電話業界の商習慣にメスを入れる動きはそれだけにとどまらなかった。総務省の次に動きを見せたのが公正取引委員会である。8月2日、公正取引委員会は「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という報告書を公表し、携帯電話市場の課題や問題点などについて指摘したのである。
この報告書は、MVNOの新規参入促進の観点を中心として、携帯電話市場の取引慣行について関係事業者などからヒアリングをし、その上で総務省の取り組みを踏まえながら、競争政策上の課題について検討したものとされている。料金低廉化やサービスの多様化を実現するためにはMVNOの競争力向上が必要であり、そのためには従来のどのような販売慣行に問題があるのか、何を是正するべきかを指摘した内容となっている。
中でも多くの指摘がなされているのは「通信役務市場における課題」、つまり携帯電話キャリアの商習慣に関する問題点である。ここでは通信契約と端末販売の分離、SIMロック、期間拘束・自動更新付契約(いわゆる「2年縛り」)、キャリアの通信網等(HLR/HSS)に対するアクセスなどが、課題として指摘がなされている。
その内容を見ると、多くは総務省のガイドラインなどで既に指摘がなされ、是正が進められたものが多い。確かに報告書の内容を見ると、「SIMロックの設定をしないことが望ましい」など、総務省のガイドラインなどより厳しい指摘がなされてはいる。だがここ1、2年のうちに、SIMロック解除の義務化や、実質0円販売の事実上禁止、そして2年縛り改善のプラン提供など、既に総務省要請によってキャリア側が多くの対応策を実施してきている。現在はその取り組みの推移を見守る段階であり、これらの点で公正取引委員会がすぐ、何らかのアクションを起こすとは考えにくい。