俳優トム・ハンクス主演の映画『ハドソン川の奇跡』(9月24日公開)でメガホンを取るクリント・イーストウッド監督は、かつて自身も劇中で描かれるような飛行機事故を経験していたという。

映画『ハドソン川の奇跡』主演のトム・ハンクス(左)とクリント・イーストウッド監督

本作の舞台は2009年1月、極寒のアメリカ・ニューヨーク。160万人が住むマンハッタン上空を飛んでいた飛行機の全エンジンが完全停止、機体が制御不能に陥り、乗客の命はおろか、ニューヨーク市内に墜落するかもしれないという危機が迫る中、サレンバーガー機長(ハンクス)はハドソン川への着水を決断する。乗客155人全員生存という生還劇を成し遂げ、世界が目撃したこの事故は、機長を国民的英雄にした。しかし、彼は一夜にして殺人未遂の罪に問われることに。本作は、その実話の裏側にある真実を描き出す。

イーストウッドは俳優デビュー前の1951年、アメリカ陸軍に所属していた。ある日、彼はシアトルから軍用航空機に乗っていたが、相互通信システムに障害が発生。絶体絶命のピンチに陥り、航空機はサンフランシスコ近くのドレイク湾に墜落した。必死に脱出を図り、何とか生き延びたものの体力の限界が迫っていたイーストウッドは、最後の力を振り絞り、どうにか岸まで泳ぎきった。

本作で描かれる航空機事故と同じく、水面に航空機が不時着したものの乗客全員生存という"奇跡"を経験したイーストウッド。爪先から血がしたたるほどの重症を負った当時を「私はもう死ぬかもしれないと思った。でも海岸に明かりが見えた。だから絶対にそこまで泳ぎ切ろうと必死になった」と振り返っている。

その後イーストウッドは、1953年に除隊。俳優に転身し、西部劇のテレビドラマ『ローハイド』(59~65)でカウボーイを演じ、人気俳優の仲間入りをすることになった。俳優としても活躍する一方、監督業でも成功を収め2度のアカデミー賞に輝いた。

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