「48層メモリチップ」が成し遂げた256GB microSDXCカード
大容量化の進むメモリカードに、microSDXCカードで市場最大容量となる256GB製品「EVO Plus 256GB」が日本サムスンから登場する。8月31日の発売予定で、Amazon.co.jpで予約を受け付け中だ。価格は24,980円となっている。今回、評価用のサンプルを試用できたので、性能チェックもしながら用途について考えてみた。
EVO Plus 256GBは、Samsungの48層V-NANDフラッシュメモリを使っているのが特徴だ。V-NANDは、いわゆる3次元構造の3D NANDフラッシュメモリで、SAMSUNG V-NANDはサムスン電子の登録商標である。Samsungはこれまで16層、32層のV-NANDチップを製造しており、今回の48層は第三世代V-NANDということになる。
従来、NANDフラッシュメモリのプロセス技術は、微細化することで単位面積あたりトランジスタ数を増やしてきた。これはPlanar型NANDや2D NANDと呼ばれる。現在は13nm前後(1z nm)まで進んでいるが、これ以上の微細化はかなり厳しくなってきている。
そこで登場したのが、積層構造で容量増という、いわゆる3次元構造のNANDフラッシュメモリ。この分野は韓国のサムスン電子が先行しており、今回取り上げるEVO Plus 256GBの48層V-NANDは「48階建てタワーマンション」というイメージだ。ちなみにmicroSDXCカードの場合、それだけでは256GB製品は実現できず、メモリチップを薄く研磨してパッケージ内に積層する技術も使われている。
EVO Plus 256GBはUHS-1(SDR104)、U3(Speed Class 3)に対応しており、公称の連続読み出し速度は95MB/s、連続書き込み速度は90MB/sだ。ラインナップ上はミドルレンジに位置するが、上位のプレミアムモデル(PRO Plus)と同等の性能を持っている。
お約束の速度チェック
少々古いPC(第2世代のCore i3、H67チップセットのマザー、Windows 7 Pro)に、USB 3.0のリーダーライター(Transend TS-RDF8W)を接続し、CrystalDiskMarkを使ってベンチマークテストを行った。
シーケンシャルの読み込みは86MB/s、書き込みは80MB/sと、スペックに近い値を出した。スペック値と実効値の差は、だいたいこんなものだ。
次にこれまた少々古い2in1 PC(Lenovo YOGA 13初代)で試したところ、内蔵SDカードリーダーではあまりパフォーマンスが出なかったが、これは内蔵SDカードリーダー側の問題。USB 3.0のリーダーライターでは、デスクトップのテストと同程度の結果となった。
【左】古いUltraBook(Lenovo YOGA 13)の内蔵SDカードリーダーでは芳しくない数値だが、これは内蔵SDカードリーダーの問題【右】YOGA 13でもUSB 3.0のリーダーライターを使えば問題ないスコア |
筆者の手持ちで一番新しいSoC(Intel Atom x5-Z8300)、かつmicroSDスロットしか持たないWindowsタブレットで試してみたところ、読み込みは速いが書き込みは今ひとつ……という結果。
転送速度だけでいえば、USB 3.0で接続するSSDストレージのほうが高速だが、サイズ的にPCへ接続したままで運用するのは難しい。最近はタブレットだけでなく、薄型ノートPCでも、フルサイズのSDカードスロットがなくmicroSDスロットのみという製品をそれなりに見かける。このようなデバイスでストレージ容量が欲しい場合、EVO Plus 256GBには大きな意義があるだろう。
大容量ゆえ破損・紛失が怖いが、耐久性は10年保証で心強い
256GBの大容量ながら、当たり前だが、大きさや重さは通常のmicroSDカードと変わらない。紛失(とそれに伴う精神的、経済的ダメージ)には最大限に注意を払う必要はあるものの、耐久性に関しては、保証期間が10年と長いので大丈夫だろう。書き換えサイクルは約10,000回となっている。
現在、microSD/SDHC/SDXCカードというのは、汎用性の高さでは最良のチョイスだ。フルサイズのSDカードアダプタを使えば、SDカードスロットで使えるし、USBアダプタも安価に手に入る。今回はPCとタブレットで試用してみたが、microSDスロットを持つスマートフォン、SDカードアダプタを使ってデジタルカメラやビデオカメラで利用することも可能だ。
Samsungによれば、1,100以上のデバイスで互換性を検証済みという(スマートフォン、タブレット、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなど)。基本的に、「SDXC」ロゴを持つデバイスなら利用でき、「SDXC I」のロゴがあるデバイスなら高速なUHS-I規格に準拠している。ただ、スペック表に「最大128GBまで」のように書かれている場合もあるので、確認は必要だ。大容量が必要と考えるユーザーにとって、いまのところ市場で最大容量となるEVO Plus 256GBは、とても魅力な製品といえるだろう。