日本マイクロソフトは8月5日、米国時間の8月2日にリリースした「Windows 10 Anniversary Update」の説明会を開催した。新機能やデモンストレーションの披露に加えて、Windows 10 Anniversary Update搭載デバイスのタッチ&トライも行われた。
Windows 10への無償アップグレード期間を終え、提供してきた1年間を振り返るとともに、サポート窓口への問い合わせ推移を紹介。4月から日本マイクロソフト独自の取り組みとして、日本でメジャーなアプリケーションの動作検証を1カ月近く行い、互換性問題解消に努めてきたと説明するのは、日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows&デバイス本部長 三上智子氏。
日本マイクロソフトへのWindows 10無償アップグレードに関する問い合わせは、2016年5月に始まったGWX(Windows 10を入手)アプリケーションの全世界的な通知UI変更あたりから増加。対応能力不足から、サポート人員を4倍まで拡大している。
さらに米Microsoft本社と交渉した上で、GWXのUI変更した6月中旬に入ったころ、Windows 10へのアップグレード方法やアップグレード後に発生するトラブルに関する問い合わせが増えてきたという。
この時期は既報のとおり、GWXの動作が曖昧で物議を醸し出していたが、「お客様に多くの混乱を招いてしまったことを反省している。この経験を生かしつつ『愛されるWindows』を目指し、利用者の声を真摯に受けとめながら本社との連携を強化する」(三上氏)と述べている。
そして7月29日が近づくにつれ、問い合わせ件数は増加の一途をたどった。日本マイクロソフトは2015年末の時点で約3万人を対象に調査を実施し、アップグレードキャンペーン終了直前にアップデートを実施するユーザーが多いだろうと把握していたそうだ。7月の問い合わせ件数増加は想定内だったのだろう。
興味深いのが、7月29日を過ぎてからの問い合わせ内容である。「アップデートしたかった。どうにかならないか」といったものも多いらしい。なお、日本マイクロソフトは8月中もサポート人員の4倍体制を維持し、Windows 10に関する情報提供を続ける。「何かわからないことや問題が発生したら、サポートデスクへ連絡してほしい」(三上氏)。
Windows 10 Anniversary Updateの目玉的な機能
今回の「Windows 10 Anniversary Update」は、2015年11月に行われた「November Update」に続く2回目のWindows 10大型アップデートで、過去の例に当てはめれば「Service Pack 1(もしくは2)」に相当する。
Windowsにまつわる俗説として、「インストールはSP1が出てから」というものがあり、聞いたことのある人も多いだろう。これはリリース直後のRTM(製造工程版)ではなく、バグフィックスなどが一段落したSP1あたりが最適なWindowsだったという、過去の実例を踏まえたものだ。2015年7月29日のWindows 10ファーストリリースから数えて1年目にあたるAnniversary Updateは、安定性の向上もさることながら、多くの新機能を備えている。
Windows 10 Anniversary Updateに関する新機能の説明は、日本マイクロソフト Windows本部 プロダクトマネージャー 春日井良隆氏が担当。
Windowsプラットフォームにおけるゲーム環境の強化をアピールしつつ(一度購入すればWindows 10 PCとXbox One両方でプレイできる「Xbox Play Anywhere」)、日本語IMEやWindows Helloのデモンストレーションを披露した。
例えば、デバイスに付属するデジタルペンで直感的なメモ作成や描画を可能にするWindows Inkは、API化されているため数行のコードを追記することで既存アプリケーションも対応可能になる。
Windows Helloを支えるWindows生体認証フレームワークを拡充し、従来のUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーション以外にも、Microsoft Edge内から使用できるため、「ECサイトによる購入時の認証が容易になる」(春日井氏)という。
この生体認証はMicrosoftも参画するFIDO Allianceという団体で標準化が進められているため、「今後はGoogle ChromeやMozilla Firefoxなどへの採用も働きかけていく」(春日井氏)とのこと。既にお使いの方なら、Windows Helloによる顔認証や指紋認証の便利さを実感していると思うが、この利便性がECサイトで使用可能になれば、Webブラウザーにパスワードを記憶させるという危険な状態を抜け出せる。
新たなタッチキーボード。スマートフォンのフリック入力に慣れていると、こちらのほうが便利。キーボードの場所は自由に移動できる |
WindowsストアにおけるWindows Hello使用例。ここでは指紋リーダーで指をスキャンすれば購入が完了する |
Cortanaについては、Windows Insider PreviewからNovember Update、Anniversary Updateまでの段階的な進化を披露した。当初はイントネーションがおかしかったものの、November Update以降はプロの声優が当てた声をもとにボイスフォントを作成し、チューニングを行っている。
現在も違和感は残っているものの、改めて聞き比べると当初とは段違いの成長具合だ。そのCortana、利用者の役に立つ例として、「カレンダー」と同期してロック画面からスケジュールを確認する機能や、日本の電車運行情報をCortanaから確認する方法をデモした。
Microsoft Edgeのアドレスバーからキーワードを入力することで、サジェスチョンの中に株価などが並ぶ。提示しているのがCortanaであることに注目してほしい |
ロック画面からCortanaを呼び出すデモンストレーション。こちらの春日井氏のプライベートスケジュール |
「愛されるWindows」構想を掲げる日本マイクロソフトだが、紆余曲折の末にAnniversary Updateリリースまでたどり着いた。今後もWindows Insider Programを経て、次の大型アップデート「Redstone 2」を目指すことになる。新たなWindows 10搭載デバイスで新しい価値を提供しつつ、法人市場での展開を加速させながら、「Windowsの世界を広げていく」(三上氏)と語った。
各メーカーの最新PCを展示
会場には多くのWindows 10デバイスが提示されていた。国内未発表のASUS「T303UA」もあり、Windows Helloには顔認証として動作する。マウスコンピューター製の、USBポートに接続する指紋センサー「mouse FP01」に注目。デスクトップPCでも簡単にWindows Helloが使用可能になる。
阿久津良和(Cactus)