何を売るか、何を売らないかのバランスが絶妙
――従来のスマホゲームとは課金のさせ方も違います。いわゆる「ガチャ」はポケモンGOにはありません。
岡本: まず、欧米ではガチャという仕組みそのものがあまり多くありません。仮にガチャを取り入れるとしても、天井があるんです。つまり、ある程度課金すると目的のものが手に入るようになっているんですね。
――リアルのカードゲームで、必ずレアカードが1枚入ったパックを箱買するような?
岡本: そう。日本のように際限なく課金させる設計のゲームはあまりないですね。なぜなら、欧米のユーザーはそういうガチャに課金してくれないからです。宣伝費も高いので、がんばって広告を打ってガチャを回してもらってもほとんど利益が出ないなんてこともよくあります。射幸心をあおるタイプのガチャはアジアに多いですね。
ただ、アジアの中でも傾向は異なります。中国や韓国はどちらかというと対戦ゲームで"王様プレイ"したいユーザーが多いですが、日本はキャラクターを集めるのが好きで、協力プレイを好む傾向にあります。コレクターなんですね。
――ソーシャルゲームですと、そのコレクションの対象であるカードをガチャでゲットするゲームが多いですよね。しかしポケモンGOでは、ポケモンをお金で買うことはできません。
岡本: 世界観に合わないということもありますが、それ以前にポケモンは生き物という扱いだからです。生き物だから能力に個体差もあります。もしお金を出してポケモンをゲットする仕様にすると、個体差をつけにくいんですよ。同じ金額を出して個体差があるとユーザーが納得しません。その意味でソーシャルゲームとはまったく違います。
ポケモンは生き物だけど、ソーシャルゲームのキャラクターはやっぱりカードなんです。この「生き物」という点については、監修に入っているポケモン社もこだわっている点なんじゃないかと思います。
――一方でポケモンGOもおこうやルアーモジュール、モンスターボールなどを購入することはできます。
岡本: ええ。ただ、「何を売るか、何を売らないか」のバランスが絶妙です。たとえばモンスターボールも、より強力なスーパーボールは買えません。ポケモンをゲットするというゲームの根幹部分は、課金で解決できないようにしているのです。
お金で何とかなるとコンテンツとしての消費速度が速くなってしまうからでしょう。そうなると、新しいポケモンを毎月出さないといけなくなって、あっという間に消費しつくされて終わってしまいます。その意味で、卵を孵化させるのに電車が使えないのもうまい調整ですね。
ポケモンGOは間違いなく長く続けることを前提としたゲームデザインがなされています。
トレード機能はどうなるのか?
――今後はトレード機能の実装も期待されます。
岡本: ゲーム性に深く関わる要素なので、Nianticの腕の見せ所だと思いますね。おそらくジムやポケストップを使ってトレードするような仕様になるんじゃないかと思っていますが、どうなるのか……。離れたところにいる相手とでもトレードできてしまうと、今度は位置情報の必要性が薄れてしまいますし、悩ましいです。トレードって、ソーシャルゲームでもゲーム経済を破壊しかねない要素ですからね。
――ポケモンGOの今後がさらに楽しみになりました。本日はありがとうございました。
※本取材は8月1日に実施しました