実際に表示されるコンテンツは、高松市が運営している既存の観光サイト「高松旅ネット」を流用している。コンテンツの内容自体はそのまま、表示レイアウトのみをデジタルサイネージに最適化する形でNECが作り込んだ。「高松旅ネット」の内容更新自体は運用開始後も高松市が行っているため、更新は容易だ。
「デジタルサイネージ用にコンテンツを作るとなると大変ですし、更新が滞りがちです。今あるものを最適化することで手持ちのデータを活用できるようにしました」と語るのは、NEC SI・サービス市場開発本部 コンテンツソリューショングループ 主任の佐藤賢太郎氏だ。
利用者がいない間は遠くから見てもデジタルサイネージが存在するとわかりやすいよう、市内の風景写真など観光客へのアピール力のある大きな画像が表示されている。定期的にタッチを促すメッセージが表示され、実際にユーザーが画面に触れると観光案内表示に切り替わる仕組みだ。広告サイネージ的な利用と、インタラクティブな利用とを1台でまかなう作りになっている。
「短納期だったので人材を集めて開発しましたが、触れるということを伝えるためにどうしたらいいかなども検討しながら進めました。4月からの利用が開始され、特にNEC側でログをとっているわけではないのですが、使ってもらえているようだと聞いています」と佐藤氏は語る。
ユニバーサル対応として、車椅子利用者を意識したカーソル機能も用意している。画面下部にカーソルを表示させて操作することで、上部のメニューに直接触れなくとも操作できる仕組みだ。また、表示されたコンテンツの「高松旅ネット」版をスマートフォンで表示するためのQRコードと、観光スポットの位置をGoogleマップに表示するためのQRコードも用意。デジタルサイネージの前を離れたユーザーに対しても観光のサポートを続けられるような作りとなっている。
ワンストップで提供するデジタルサイネージを社会ソリューションへ
高松市の事例では、NECはハードウェアの作り込みやコンテンツ表示レイアウトの構成、ハードウェアの設置等を担当している。納入後、実際の運用は高松市が行い、今後はメンテナンス等のサポート業務を行って行く予定だ。
「インバウンド需要は今後伸びると考えていますので、対応を広げて行きたいですね。デジタルサイネージを地域振興のツールとして活用していただく、社会ソリューションにしたいと考えています」と今村氏。
すでに一般店舗や商業施設などへのデジタルサイネージ納入の実績を持つNECだが、今回の事例ではさらに訪日観光客向けの作り込みや、触って利用してもらえるように誘導する方法などのノウハウを積み重ねている。
「触らせ方、筐体デザインなど多くのノウハウを持っていますし、専用コンテンツを作成するためのCMSのノウハウもあります。そして、ディスプレイも多くのサイズと種類を揃えています。デジタルサイネージをワンストップで提供できるのがNECの強みです」と今村氏は語った。