SBI証券は7月29日、「マイナス金利時代のベストな資産運用方法は? 資産運用・特別セミナー」を開催した。このレポートでは、セミナーの様子を前後編に分けて紹介する。
モーニングスター 代表取締役社長 朝倉智也氏 |
日銀の金融政策決定会合、専門家はどう見る?
日本銀行は7月29日、金融政策決定会合を行い、追加の金融緩和策として、ETF(上場投資信託)の買い入れ額を現行の年間約3.3兆円から約6兆円へ増額することを決定した。一方、金利のさらなる引き下げと国債買い入れ額の増額は見送られたが、これらの決定についてモーニングスター 代表取締役社長 朝倉智也氏はセミナーで次のように語った。
「ETFを6兆円だけで済ませたのは評価できる対応で、『日銀はよく頑張った』という印象がある。ただ、もしポジティブサプライズをするなら、『マイナス金利をやめる』という選択肢があってもよかったのではないか」(朝倉氏)
日銀によるマイナス金利政策下での資産運用は「長期的目線での分散投資」が鍵になると語る朝倉氏。長期分散投資では、日銀会合のような大きな発表があっても動じず、自分の決めた投資スタイルを変えずに続けることがポイントだ。
「安倍首相は先日、28兆円超の経済対策実施を表明したが、日本経済をふたたび盛り上げるのは難しいだろう。だからこそ長い目で見て運用し、年率を上げていく資産保全が必要となる。日本の金利は低く、消費者物価指数は実質マイナスだ。また物価以上に給与が上がらないといけないが、現実は上がっていない。賃金も年金も金利も厳しい、となれば利回りを上げようというのが資産運用だ」(朝倉氏)
資産はどのような形で保有するべきか
朝倉氏によると、資産運用は「資金使途」と「投資期間」に応じて考える必要があるという。資産を大きく3つに分けると、生活費、緊急用予備費として「預貯金」を、5年以内に必要な支出として「個人向け国債(変動金利型10年満期)」を、5年以上の中長期の投資資産として「投資信託(国内外の再建、株式、国内リート等に分散投資)」を保有するのが良いという。
様々な投資方法の中で、朝倉氏が「分散投資」を推す理由は「リターン順位」が年によって大きく変動するからだ。
「資産別の年次リターン順位は目まぐるしく変わる。例えば『新興国株式』の場合、2007年は1位(リターン率34.00%)、2008年は8位(同-62.67%)、2009年は1位(同81.13%)と大きく動いている。このように首位と最下位を行き来することは珍しくない。それを『今年は国内株式』『今年は新興国株式』といった様に、毎年乗り換えて1位になるものだけを購入しつづけるのは困難である。だが、8種類に分散して持てば、それほど間違いはない」(朝倉氏)
「分散だけでなく『長期間で持つ』ことも重要だ。たとえ分散投資をしていても、1年間だけの保有では濃淡が出る。購入のタイミングにもよるが、1年間だけ保有すると利回りはマイナスでも、5年持つとプラスになることもある。10年間保有すれば、どのタイミングで投資してもプラスのパフォーマンスとなることがほとんどだ」(朝倉氏)
長期分散投資のポートフォリオの組み方
長期分散投資に必要な要素は「時間と投資先を分散し続ける忍耐と勇気」だと朝倉氏は語る。では、具体的にはどのようにポートフォリオを組めばよいのか。考えるべき要素は「成長」「インカム」「インフレヘッジ」の3点だ。
「グローバル株式などの『成長資産』が6割、グローバル国債などの『インカム資産』が3割、金などの『インフレヘッジ資産』が1割。ただしこれは『この比率がベスト』というポートフォリオではない。短い期間だとリスクは取れないが、確定拠出型年金などを使って長期で運用するのであれば、成長資産を増やしてもいい」(朝倉氏)
また、朝倉氏が提唱する「マイナス金利時代に考えるべき資産運用方法」には下記の5点を実現することが必要になる。
■マイナス金利時代に考えるべき資産運用方法
1. 分散投資(資産の分散)のポートフォリオを構築する
2. ポートフォリオ全体のコストを抑える
3. 最短でも5年、できれば10年運用するつもりで投資する
4. 定額積み立てを活用して時間分散を図る
5. 分散し続ける勇気と忍耐力を持つ
「長期運用すれば、多少の変動などは気にならなくなる。資産の買い方は毎月積み立てのドルコスト平均法で買っていくこと。長い時間軸かつ定額で投資することにより、かなりの確率で一点張りよりも上手に運用できる。相場で日本株が暴騰したら分散投資をやめる人もいるかもしれないが、上がったときに分散投資をし続けられる精神力が求められる」(朝倉氏)
後編ではマーケットアナリストによる「Pokemon GO」関連株の動きの解説を紹介する。