公正取引委員会は8月2日、MVNOの新規参入促進の観点から携帯電話市場での取引慣行についてヒアリングを行い、「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という報告書を公開した。総務省のタスクフォースのように法的な影響力があるわけではないが、多大な影響力を持つ公正取引委員会の報告書だけに、市場への影響も小さなものでは止まらないはずだ。

既存の販売方法を根底から否定するような内容

政府筋からの携帯電話料金に対する圧力は、昨年末に発表された総務省タスクフォースの提言などがある。携帯電話の販売については、特に新規やMNPに対する割引が大きいこと、長期利用者のメリットが低く、新規/MNPへの割引への原資となっていることは不公平だ、などの批判があった。こうした批判への対策に加え、MVNO市場への誘導として、MVNOキャリアに対する規制緩和などが盛り込まれたのが総務省タスクフォースの役割だった。

これに対し、今回発表された公正取引委員会の報告書は、概ねこのタスクフォースを踏まえつつもさらに範囲を広げ、総務省よりも一歩も二歩も踏み込んだものになっている。

まず政策上の課題として、現在の携帯電話市場で通話料と端末代が一体化していることやSIMロックをかけることでユーザーの端末やキャリア選択に対する自由を妨げている場合、独占禁止法上の問題となるおそれがあることを指摘。また2年縛りの解約金自体は違法ではないが、違約金が不当に高価な場合(ただし具体的な金額は提示していない)、競争政策の観点から望ましくなく、場合によっては独禁法上の問題となることを指摘している。

ユーザーの契約情報などの情報データベース(HLR/HSS)についても、現在開放義務はないとしつつ、MVNOがアクセスできるようになることで独自SIMの提供などさまざまなサービスを提供可能になるため、開放が望ましいと指摘。開放の条件として技術的水準などを設けることは構わないが、不当に厳しい水準を設けることは独禁法上の問題であるとしている。

また、端末販売における割賦販売についても、MNOが総額を固定することにより販売代理店の販売価格が実質的に拘束される場合や、MNOおよび端末メーカーが販売店に対して価格や販売方法、広告・表示方法を拘束すること、MNOや端末メーカーが不当に高価に中古端末を下取りしたり、引き取った中古端末を国内で再流通させることを制限するといった行為は、独禁法上問題であることを指摘した。

さらにOSの開発メーカー(AppleおよびGoogle)に対しても、端末メーカーやMNOに、競合するOSやアプリケーションの開発やプリインストールを禁止したり、自社製アプリをデフォルトに指定することも、独禁法上の問題となるとしている。

総務省のタスクフォースが指摘していたMNPやしばり販売といった内容に止まらず、携帯販売の慣例全体に波及する内容であり、MNOや端末メーカーの販売戦略そのものに影響を与えかねない内容だ。当然MNOやメーカー側からの反発も予想されるが、公正取引委員会では問題となるような行為の見直しを各社に求めつつ、独禁法に違反する事実が認められた場合は厳正に対処するとしており、行政と企業の論理が真っ向から対決する事態になりそうだ。