近年、ビジネスにロボットを役立てようとする動きが活発化しており、さまざまな場面でロボットを見かけることが多くなりました。店頭で接客するPepperの会話や仕草が可愛くて、つい足を止めてしまう人もいるのではないでしょうか。
ソフトバンク ロボティクスでは、Pepper法人モデル「Pepper for Biz」向けロボットアプリ開発者を総合的に支援する「Pepperパートナープログラム」を実施しています。同プログラムは、ロボアプリを開発する「ロボアプリパートナー」とロボットのユーザーエクスペリエンス(利用体験)をデザインする「デザインパートナー」、Pepper for Biz導入企業にコンサルティングを行う「コンサルティングパートナー」の3種類のパートナーを認定し、開発者などを多角的に支援するものです。
ロボアプリパートナー向けには、テクニカルサポートやトレーニングツールなどの技術的な支援、ロボアプリの安全性を審査する仕組み、販売促進のための機会などを提供するなど、ロボアプリの開発から販売までを総合的にサポートしていく体制が整えられています。
今回は「Pepperパートナープログラム」の認定パートナー企業であるフューブライト・コミュニケーションズ 代表取締役社長の居山俊治氏に話を伺いました。Pepperを受付係として使う「ロボ電」、PowerPointを使ったプレゼンを行う「ロボピッチ」など、Pepperを使ったアプリ開発を行っている企業。最近では、高齢者介護施設向けのアプリケーションにも力を入れているといいます。また、2015年2月には、ソフトバンクロボティクス主催による「Pepper App Challenge 2015」で最優秀賞とソーシャルイノベーション賞を受賞している企業です。
――Pepperのアプリ開発に参入するきっかけを教えてください。
介護分野での人材不足が話題になりますが、それらの問題を解決したいと思ったのがきっかけです。今までの介護ロボットは介護者を持ち上げたり、排泄物の管理など、介護士さんの負担軽減が目的でした。しかし、介護士さんから話を伺うと、入居者さんとのコミュニケーションに悩みを抱えていることが分かりました。作業が忙しいと、入所者さんから話しかけられても、話相手になってあげられないことを申し訳ないなと思いながら仕事をしているそうです。それを聞いて、話相手になるようなロボットを開発してみようと考えるようになりました。
最初からPepperを使おうと決めていたわけではありませんが、開発者向けの情報が多く開示されており、LinuxやPythonのスキルやノウハウが生かせそうだったことから、採用を決めました。
――今回、開発した介護施設向けアプリについて教えてください。
Pepperを使った介護施設向けレクリエーションサービスを開発しました。Pepperの掛け声に合わせて、入居者さんが身体を動かすもので、レクリエーション内容はレクリエーション研究で有名な余暇問題研究所代表の山崎律子先生に監修していただきました。
――介護施設で実証実験を行ったと伺いました。結果は?
実施前は、高齢者がPepperに対してどういった反応するのかは未知でしたが、思った以上に意外な手応えを得られました。例えば、一般的に男性の方がロボット好きなイメージがありますよね。しかし、実際には女性の方が人気が高かったです。きっと、女性の方が心理的な壁や警戒心、拒否反応がないのでしょうか。ほとんどの人がすんなりと打ち解けていました。
――現場で働く職員さんからの反発はなかったのでしょうか?
むしろ、「Pepperが来てくれて助かる」と喜ぶ声が多かったです。レクリエーションをやる場合、職員さんが前に立って指導しなければなりません。しかし、それらのことが向いている人と苦手な人がいますよね。また、参加者全員には目が行き届かないなど不十分な部分もありました。
しかし、システムを導入することで、Pepperが前に立ち、自分はサポート側に回れるようになれます。話を聞いていない介護者さんがいても、「Pepperくんが話しているから、ちゃんと聞いてくださいね」とフォローできるようになったと聞きました。また、職員さんたちの心理的な負担が減り、細かなケアができるようになったという意見もいただきました。
――すんなり受け入れられた要因はありますか?
あくまで仮説ですが、Pepperのデザインが理由だと考えています。Pepperは小学生くらいの高さなので、高齢者や認知症の方でも人間として認識しやすいのではないでしょうか。きっとPepperの高さが高さが半分くらいになったら、おもちゃっぽくなってしまう気がします。また、車いすの方とPepperが同じ目線になることも要因と考えています。
――Pepperの安全性に対して心配はなかったのでしょうか?
元々Pepper自体にセキュリティや安全を確保する仕組みが備えられているので、心配ありませんでした。介護施設の場合、近くに職員の方がいらっしゃる状態で利用するため、ある程度の事故は防ぐことができます。また、アプリベンダーとしては、話す相手が高齢者や認知症の方が対象になるため、介護士さんや専門家と相談しつつ、高齢者の方に合わせた話し方になるように開発しました。
――コンテンツの有効性について専門家に伺ったそうですね。
今回のレクリエーションアプリも専門家に協力を仰ぎ、効果測定を実施しました。ある施設では、同じ内容のコンテンツを同じ参加者で複数回やった場合の飽きる度合いを調査しました。2カ月で4回ほど実施したのですが、繰り返すほどに慣れていき、より参加してもらえるようになるという結果が出ました。参加者の中には、前回の内容を覚えていて、「次は、〇〇をやるわよ」「ほら、やったでしょ?」と楽しそうな素振りが見られました。結果からすると、1カ月同じコンテンツを続けても問題ないことが分かりました。