7月24日に幕張メッセで行われた国内最大の造形イベント「ワンフェス2016[夏]」。ワコムは、前回同様、Pixologic社の原型製作ソフト「ZBrush」(ズィーブラシ)とタッグを組んでブースを出展。液晶ペンタブレット「Cintiq 27 QHD」、OS搭載型タブレット「Cintiq Companion 2」を体験できるブースを展開した。

ブース内のステージでは、デジタル原型製作において広く使われている「ZBrush」を使用したセミナーやパネルディスカッションなどが開催され、毎回好評を博している。今回は、フィギュア制作講座「おとなの美術室」の担当講師・深川克人氏による、「ホントのところはどうなのよ!? デジタル造形徹底分析 Mk-Ⅱ!!」と称したセミナーをレポートする。

満席の状態でスタートした深川氏のセミナー

このセミナーでは、「ZBrush」におけるデジタル造形の多彩なワークフローを比較・検証。3DCGに慣れた人、アナログ作業に慣れた人のそれぞれにオススメの作業手順が紹介された。

「ZBrushは、今ある3D造形ソフトの中で、フィギュア原型に向いているソフトはない」と話す深川氏。造形の手法には大きく分けて2つあり、従来の手で作っていくアナログ感覚の「粘土こねこね」手法と、3DCG的な知識や勉強が必要となる「ポリゴンちくちく」手法のパターンがあるという。

粘土をこねる感覚で作成する「粘土こねこね」手法

サンプルから細かく仕上げていく「ポリゴンちくちく」手法

人の顔を作成する際、「粘土こねこね」では、ただの円のオブジェを用いて、ブラシは6・7種類、マスクやカットする機能など10種類ほどを使用して完成させることができ、一方、「ポリゴンちくちく」は、「ZBrush」にデフォルトで入っているローポリゴンの顔のサンプルを利用。徐々に細部を作りこんで作成させることが最適だと解説した。

「粘土こねこね」では、後の表情の修正が難しい

「ポリゴンちくちく」では後の表情を修正しやすい

どちらもメリット・デメリット(「粘土こねこね」では、凸凹作成に向いており、平らな面の作成は不向き。「ポリゴンちくちく」は滑らかな面の作成は容易で顔の表情の修正も後から行いやすいが、ベースの完成にかなりの時間が必要)があるので、自分に最適な手法で造形作りに挑戦してほしいと語る。また、どちらの手法も高機能なものが利用できると太鼓判を押した。

頭から角を作るなどの作業は「粘土こねこね」が得意

「ポリゴンちくちく」では元のポリゴンの引き伸ばした筋が出る場合もある

そして最後は「キャラクターのポーズを最初から作るのか、後から作るのか」という話題に。「ZBrush」に限らず、左右対称のキャラクターを作るのは比較的容易で、深川氏のカルチャースクールなどでは、デジタルな「ポリゴンちくちく」を紹介しているという。

その理由として、「粘土こねこね」の場合は、左右のパーツを作らなければならないためで、「ポリゴンちくちく」の場合、後のポージングも服のシワづけなどのディティールもつけやすく、効率だけを考えると最適な手法だと話す。

「ポリゴンちくちく」では布のような薄いオブジェの作成が容易

ただ、フィギュア原型に関しては、完成状態でポーズは動くことがなく、いかに美しくその場に存在させられるかが重要だと力説し、「フィギュア造形は、ただリアルな人間を再現するだけではなく、そのポーズに応じて一番カッコイイ形を作る作業だと痛感しています」とフィギュアへの思い入れを吐露した。

「ポリゴンちくちく」で作成したセーラー服の少女

深川氏がセミナー前に「粘土こねこね」で作成したというキャラクター

これからも日々進化するであろうデジタル3D原型の世界。今後も液晶タブレットと「ZBrush」の進化に注目していきたい。