Wi-Fi Allianceは7月27日、Wi-Fi CERTIFIED ac最新機能の技術的詳細や今後の展開について、都内で説明会を開催した。
説明を行ったWi-Fi Alliance マーケティング担当バイス・プレジデントのケビン・ロビンソン氏によるとWi-Fi Allianceは「あらゆる場所ですべての人とモノをつなぐ」という方針の元、業界をリードしており、現在日本企業を含む700社以上のメンバーが参加。20以上の開発プログラムが進行しており、認証機器も3万以上の製品に渡るという。
802.11ac Wave2は最大3倍のスループット
Wi-Fi Allianceの認証プログラム「Wi-Fi CERTIFIED」は過去に機種間でのワイヤレス接続に問題が生じるケースがあったことから、接続互換性を保証するために作られたものだ(これが「Wi-Fi」ブランドとなる)。説明会のテーマとなったWi-Fi CERTIFIED acとは、IEEE802.11ac規格を基に相互接続性を確認する認定プログラムで、多くの無線LAN機器が対応している。
今回はこのWi-Fi CERTIFIED acの最新認定プログラムである「Wi-Fi CERTIFIED ac wave2」機能について説明があった。従来の802.11ac Wave1に対して、802.11ac Wave2ではMU-MIMOのサポートや使用チャネル幅の拡大などで、最大3倍のスループットが得られるようになる。
802.11ac Wave2はすでにアメリカ時間で2016年6月29日に認定プログラムを提供開始しており、サムスン製スマートフォン「SAMSUNG Galaxy S7」など認証済みの機器も登場している(Wi-Fi AllianceのWebサイトでは27日19時時点で27製品が認証済みとして掲載)。また、過去にWi-Fi CERTIFIED acを取得した製品でも、「メーカーによっては(Wave2の)再認証を受けるかもしれない」という。
Wi-Fi帯域増のニーズ、5年で全製品がデュアルバンド対応に
Wi-Fiの帯域が必要になる理由には、モバイルデバイスやリッチコンテンツの台頭が挙げられる。アメリカでは一家庭で平均7.8台のコネクテッドデバイスを所有しており、ケビン氏は「私も(滞在先の)ホテルで5台程度の機器を使用している」という。また、2015年時点で一秒間に82万分以上の動画が転送されており、高画質ストリーミングビデオサービスの普及でこの勢いはさらに加速すると予測。
これまでのWi-Fiは主に2.4GHz帯を使用していたが、利用の増大から見ると帯域が足らず、今後は5GHz帯の利用が広がっていく。Wi-Fi CERTIFIED acの提供はこの動きを促進するものと判断している。現時点でも68%のWi-Fi機器が2.4GHz/5GHzの両方に対応するデュアルバンドだが、今後5年以内に全製品がデュアルバンド対応になると予想している。
802.11acの機能強化「Wave2」に合わせて認証プログラムもすでに開始。最大3倍のスループットに対応する |
家庭でも多くのデバイスがWi-Fiに接続され、さらに高品位なコンテンツの普及によりWi-Fiの帯域が重要になっている |
従来のWi-Fiの中心は2.4GHz帯だがバンド幅が狭く、帯域不足。今後5年以内にすべてのデバイスが5GHz帯をサポートするという |
802.11ac Wave2の新機能。市場の多くのWi-Fi CERTIFIED ac機器はまだWave2の認証が得られていない |
Wave2で特に注目したいのがMU-MIMO。対応機器ならばマルチタスクで転送を行うために高密度環境下でもスムーズな利用が期待できる |
チップセット出荷の予測グラフ。2019年には2.4GHzのみをサポートしたチップセットはほぼなくなり、一方で802.11ad対応チップセットが半数を占める |
802.11ahや802.11adの普及に期待
今回の会見では無線LANビジネス推進連絡会の小林会長も同席。同連絡会は2016年3月にストラテジックパートナーに認定されており、小林氏は日本および世界の普及拡大に向けてコラボレーションを行いたいという。
同氏は個人的な体験と前置きしつつ、5月の無線ネットワーク利用のうちLTEが2GBだったのに対し、Wi-Fiは30GBを使用し、Wi-Fiはなくてはならないものとアピール。また、Wi-Fi市場の伸びに関して「2016年のチップ数出荷予測は30億で、これは2001年の年間出荷数(800万)が毎日出荷されている事に相当」と説明した。
無線LANビジネス推進連絡会としては今後登場する802.11ahや802.11adの普及を期待するとともに、802.11ahに関してはフィールドテストを通じて評価を行い、機能や使い方のマーケティング活動としてWi-Fi Allianceと共有、また改善点があれば提案したいと、今後の活動内容についても説明した。