フェルナンデス氏が指摘するように、顧客を中核に据えたマーケティングの推進は担当者だけでなくトップエグゼクティブが毎日考える重要な企業課題になり、マーケティングソリューションは単なるツールではなく企業の事業戦略にとって大きな武器となった。ガードナー、アクセンチュア、フォレスター、マッキンゼーなど多くの調査会社・シンクタンクは、顧客体験を起点とした市場競争への転換、デジタルトランスフォーメーションの推進、社内における緊密な連携の重要性を指摘しているが、企業はどうすれば顧客体験を中心としたデジタルトランスフォーメーションを実現することができるのだろうか。

調査会社・シンクタンクは未来のマーケターに求められる要素を示唆している

フェルナンデス氏は、「デジタルトランスフォーメーションは、新しいウェブサイトを立ち上げたり、新しいマーケティングツールを導入することではない」と指摘した上で、調査会社アルティメーターの定義として「テクノロジーとビジネスモデルに新たに投資して、顧客体験ライフサイクル内のあらゆるタッチポイントで、デジタル消費者と一層効果的な形で関係を構築することを目指すこと」と紹介。中でも、顧客視点に立ち、テクノロジーを活用して顧客をより深く理解することが重要だとした。

「変革のためには、双方向の個人的な対話が必要だ。一貫して全てのチャネルで対話をはかり、顧客体験のライフサイクルを通じてその関係を保持していかなくてはならない。そのためには、企業全体が変わっていく必要がある。CEOが率先して変革を進め、CIOとCMOが密な連携を取らなければならない。マネジメント、IT、マーケティングのトップエグゼクティブが率先して変革を起こす必要がある。3社が連携して全ての事業の構造を変えていかなくてはならない。これは全てのマーケターにとって大きなチャンスだ」(フェルナンデス氏)

調査会社アルティメーターによる「デジタルトランスフォーメーション」の定義

つまりフェルナンデス氏は、営業や販売を支援する存在だったマーケティングは、もはや企業の業績を左右するほど事業の中核的な存在になり、そこでは顧客志向に立ったエンゲージメントの強化が求められるということ。そして、それを実現するためにはマーケティングが中心となり企業の事業の在り方そのものを変革しなくてはならないということ。マーケターが次世代のビジネスにおける中心的な役割を果たすというのだ。

「マーケターは常に顧客視点に立ち、企業の変革や新しいビジネスをリードしていくイニシアチブを持つことになる。マーケターは全く新しい世界に突入しようとしている」(フェルナンデス氏)

フェルナンデス氏は、「これからのマーケターは企業の変革をサポートしなければならない」と呼び掛ける。マーケターのミッションは、リード獲得をどうすれば効率化できるのかを考えることでも、広告掲載の費用対効果を考えることでも、キャンペーンを設計して実行することでもない。マーケティングオートメーションなどのデジタルソリューションを駆使して毎日顧客との膨大な対話を繰り返していく中で、企業のビジネス全体を変革していかなければならないのだ。