LINEは7月15日、前日(現地時間)のニューヨーク証券取引所に続き、東京証券取引市場第一部へ上場した。これに合わせ同日、メディア向けの記者会見を開催した。

LINE株式会社 代表取締役社長 出澤剛氏

代表取締役社長 出澤氏は同社が上場した理由について「透明性・信頼性を高めること」「成長への投資」の2点を挙げた。また、米国でも同時に上場したことについては「世界でのLINEのプレゼンスを上げる」ためと説明。アジアの成長が世界から注目されていることや、米国の最先端技術に触れ、GoogleやFacebookといったインターネットジャイアントと同じ枠の中で競争することが重要だと述べた。

月間利用者の6割以上を主要4カ国が占める

DAU/MAU比率が高いことも特徴

LINEの月間ユーザー数(MAU)は現在全世界で2億1,800万人。同社は2015年よりアジア地域、特に日本・台湾・タイ・インドネシアの4カ国にフォーカスしたサービス展開を行っている。この4カ国における現在のMAUは1億5,200万人に上り、2016年3月時点で前年比23%と順調に成長を続けている。また、デイリーユーザー数(DAU)の比率が日本では8割を超えるなど非常に高いことも挙げられた。スマートフォンユーザーにとって、インターネットの入り口がメッセンジャーアプリになるりつつある。

LINEはメッセンジャーを入り口としたポータルサービスへ

これを踏まえたこれからの事業展開の方向性について、出澤氏は「スマートポータル」という言葉を挙げた。これは、音楽・動画・マンガ等のコンテンツ・プラットフォーム、決済・交通・フード等のライフ・プラットフォームからなるもので、「SNSというよりも、PC時代の非常に強かったポータルサービスにイメージが近い」という。

広告・コンテンツを中心に、メッセージングサービスでは数少ないマネタイゼーションに成功

ポータル戦略でユーザとの接点が増加すれば、収益化の推進も一層の進化を期待できる。2015年には1,200億円の売上を計上。その30%は海外が占める。売上のうち大きな割合を占めるのは広告とコンテンツ(ゲーム)だ。さらに新たな収益の柱になる事業として、昨年末よりパフォーマンス型広告を導入しLINEタイムラインで先行して展開。6月に正式にサービスをリリースし、現在はLINEニュースにも投入されている。LINE LIVE、LINEブログといったメディアサービスも伸びており、売上の拡張性が見込めるとした。

主要4カ国でスマートポータルの完成を先行させ、次のタイミングを狙う

今後の成長戦略については、まずフォーカスする4カ国でのスマートポータル完成を目指す。その上で出澤氏は「次の波」を狙っていくと述べた。

「スマートフォンメッセンジャーの世界での陣取り合戦はほぼ終わり、この状況で新しいエリアへの展開は成功確率が低い。今海外での主流はメッセンジャーに特化したコミュニケーション型のものと言われているが、それは通信環境やデータプランに依存している面がある。近い将来、各国の通信環境が向上して、データを使うことに対する許容度が上がってくれば、スマートポータルが次の大きな波になる」(出澤氏)

誤送信の経験について問われ「無くはない」と回答

続いて出澤氏は記者団からの質問に答え、メッセンジャーの機能について、誤送信したメッセージの削除機能は「可能性はあると思っている。議論していないわけではないが、ただやる・やらないはまだ決まっていない」と述べた。

今年3月に発表された「LINEモバイル」のサービス開始については、今秋サービス開始となる見通しを示した。独自の端末販売や販売のための実店舗設置は行わないという。

また、スマートポータル実現のためパートナー企業向にプラットフォームを提供するためのAPIを整備し、つなぎやすい仕組みを「ちょうど今、仕上げている」ことを明らかにした。これも今秋より提供される予定。個別の事例では、トランスコスモスとのジョイントベンチャーによりコールセンターでラインを使うプロジェクトを進めていることを挙げた。

この日の終値は4,345円で、時価総額は9,100億円余り。今年最大の新規上場となった。