『あしたのジョー』や『おれは鉄兵』などで知られる漫画家・ちばてつや氏原作の劇場アニメ『風のように』が、7月9日より下北沢トリウッドにて公開されたことを記念し、初日上映後にちば氏を招いてのトークイベントが行われた。
『風のように』は、1969年に雑誌『週刊少女フレンド』の読み切りとして掲載された短編作品。自然と、そこに暮らす人間がどのように共存できるか、70年に差し掛かろうとした時代に環境問題を提起した作品で、47年経った現在もファンの根強い支持を得ている。今回の劇場化にあたり、アニメ制作は『フイチンさん』『遊戯王ARC-V』『ふるさと再生日本の昔話』などを手がけるエクラアニマルが担当。声優には、主役の三平役に野沢雅子、チヨ役に福原美波を起用する。
上映後に行われたトークショーには、原作のちばてつや氏、監督の本多敏行氏、作画監督の野口征恒氏が登壇した。
高校時代に原作を見て以来、ずっと心に残っていたという本多監督。今回のアニメ化の実現にあたり、「2003年に行われたアニメ『フイチンさん』の披露パーティーで、ちば先生にお会いした際に熱い思いを伝えたところ、快諾をいただきました」と経緯を説明した。
ちば氏は、「日本の景気が良くなる一方、工場の乱立で川や海が汚され、紙の需要が高まり国内外の木々が伐採され、自然が壊されていた時代だった。私はそれが気になり、一時は『マンガが自然を壊しているんじゃないか?』と、漫画家を辞めようかと考えたほど」と当時を振り返り、「そんな背景もあり、自然は大事であり、自然があるから日本は美しい国なんだと、若者に伝えたかった」と作品への熱い想いを吐露した。
アニメ版を見てちば氏は「原作は40数ページほどの短編作品。アニメになるとキャラクターが動いて音楽が流れ、主題歌『恋風』を歌う松本佳奈さんの声もすばらしい。五感すべてで楽しめて、マンガでは味わえない、新しい喜びでした」と大絶賛。また、「原作にはないマムシが出てくるシーンもよかった。あのあたりは本当にハラハラした」と注目エピソードを挙げていた。
劇場版アニメ『風のように』は、7月29日まで下北沢トリウッドにてロードショー。ゲストを招いてのトークイベントも行われるので、詳しくは公式サイトにて。