Windows 10の大型アップデート「Anniversary Update」のリリース日が8月2日に決まった。7月29日でWindows 10の無償アップグレードが終了するので、ギリギリまでWindows 7/8.1を使ってきたユーザーは、Windows 10にアップグレードした直後、さらにUIが変化することになる。

「Anniversary Update」は8月2日リリースに

Microsoftは今回の発表で、Windows 10が動作するデバイスの数が3億5,000万台に達したことも明らかにした。それでも、Build 2015で目標に掲げていた「10億台のデバイス」には遠く、まだ道半ばといった状況である。

Build 2015で「10億台」を目標に掲げたTerry Myerson氏

6月中旬からWindows 7/8もWindows 10無償アップグレードの対象に加わった

Microsoftはこれまで、強硬な手段でWindows 7/8.1ユーザーにアップグレードを促してきたが、その方針を変更しはじめた。消費者庁による注意喚起や米国のユーザー訴訟といった外圧もあり、「Windows 10を入手(GWX)」のUIを変更し、明確なアップグレード拒否を可能にした。

「無償アップグレードを辞退する」という選択肢が加わったGWX

Windows 10無償アップグレードに関する一連の混乱を振り返ると、Microsoftの姿勢に問題があったことは否めない。ただ、一部の企業ユーザーには管理体制の甘さも散見される。

例えば企業内でWindows 7/8.1を使う場合、WGXのインストールはドメイン管理やWSUS(Windows Server Update Services)などの管理ツールで、適用する更新プログラムを取捨選別できるため、容易に避けられるはずだった。個人ユーザーが更新プログラムの取捨選択を行うのは結構な重労働だが、企業で「ある日、Windows 10になっていた」というケースは、システム管理者の不備があった、もしくはユーザーが社内ルールを守らなかった可能性が高い。

もっとも、Microsoftが当初、WGXを含む更新プログラムを明確にしていなかった、という問題があったのも事実だ。また、専任のシステム管理者がいない小規模の企業では、こうした対処を行うのは難しかっただろう。

Windows Server 2012 R2によるWSUSサーバーの設定で、展開する更新プログラムは取捨選択できる

他方で巷では、テレビ番組やデジタルサイネージにWGXが映り込み、支障を起こしていることを面白おかしく取り上げている。だが、導入や管理を請け負ったシステムインテグレーターは、デジタルサイネージを制御するOSにWindows 7やWindows 8.1といったクライアント向けOSではなく、組み込みOSであるWindows Embeddedを使うべきだった。失笑を招く結果になったのは、Microsoftにとっても不幸な出来事と言えるだろう。

PCに限らず、モノを正しく使うためには多くの知識を必要とする。しかし、家電のようにPCがイージーに使えるようになっていった結果、「わからないことは自ら調べる」という意識を持ったユーザーが減少した。Windows 10無償アップグレードの混乱には、こうした流れも一因としてあるのではないだろうか。

古いOSを使い続けることを選んだユーザーはその問題点を認識し、新しいOSへ移行するメリットとデメリットをしっかりと理解すべきだろう。

阿久津良和(Cactus)