「マイナス金利」「消費税UP」「土地価格のUP」……だから今が買い時? マンション購入を検討している方にとっては、高額な買い物だけに気になるところです。本当に今が買い時なのか、ニュースで話題の社会状況をどのように考えればよいでしょうか。
賃貸か購入か
「賃貸か購入か」は30年前くらいから一定の間隔で話題になるテーマです。その都度、双方のトータルの出費がさまざま検証されましたが、いずれの時期の検証も、無難に生活していく上での総費用はさほど変わりがありませんでした。問題は万一の場合にどちらが有利か、リスクが高いかなのです。
・病気になったら、家賃が払える? ローンが払える?
・リタイアしたら家賃が払える? ローンが払える?
・転勤になったら、転職したら?
購入したマンションはどうする?
・老後はどこに住む?
故郷に家がある? マンションを買い替える? そのまま住む? 賃貸のまま過ごしたい?
考えられるいろいろなリスクに対して、それぞれ対処法を考え、どちらが対処しやすいかを考えます。私は基本的に購入の方が、リスクが少ないと考えています。債務者が死亡したり、一定の障害を負ったりした場合は、団体信用生命保険により、その後の返済は免除され、借金のない住まいが本人または遺族に手に入ります。またローンを返済し終わった老後の生活は大幅に楽になります。若い方は「年を取ったら働けなくなる。医者に支払うお金も相当なものになる」ことへの想像力に欠ける傾向にあります。年をとっても家賃を払っていかなければならない負担は相当なものなのです。
購入の場合のリスクを少なくする絶対条件は、資産価値が目減りせず有利に売却したり貸し出したりできる市場価値の高い物件であることです。それさえあれば賃貸よりもはるかにリスクを少なくすることができます。反対に購入後にマンションが値下がりし、借入金額以下になってしまうような物件はリスクが高くなります。また、リスクを少なくするためには地震保険をしっかり掛けておくことを忘れないでください。災害のリスクの少ない地域や物件を選ぶことも大切です。
わが家の例で言えば、月々のローン返済価格の倍額以上で貸すことができ、差額で小さなアパート程度は十分に借りられるのを検証してから購入しました。当然購入前に、物件近くの不動産会社で、いくらで貸せるのかの調査も行いました。
新築か中古か
新築がよいか、中古がよいかは購入者の年齢やその後のマンションの活用に対する考え方にもよります。50代の子供がいない夫婦に新築物件の意味はあまりありません。しかし20代の夫婦に築30年の物件であれば、老後に建て替えになる可能性があります。住み続けるのであれば、そのための資金も考えて購入しなければなりません。その物件に一生住み続けるか買い替えるか等によっても違ってきます。
まだまだ日本の中古物件は本来の価値以下の評価しか与えられない傾向にあります。そのため多少の経年年数であれば中古物件を安く購入できるメリットがあります。その場合は最低限新耐震基準が施行された後に設計されたものであることが重要です。
消費税前の方が買い時?
消費税がアップすると、どの程度負担が上がるか検証してみましょう。
・購入価格4,000万円(内、土地2,000万円、建物2,000万円)
※土地購入費相当分には消費税がかかりません
・消費税アップ分2%=2,000万円×0.02=40万円
・すまい給付金(年収500万円の場合)消費税8%の時10万円→10%の時40万円
・差額負担アップ分40万円-(40万円-10万円)=10万円
・10万円に対する1.5%で35年固定ローンの場合の総返済額は12万8,262円
さて、これを見てどう考えるでしょうか。「消費税上がる前がお買い得!!」という宣伝文句が、それほど意味がないことがわかります。確かに35年間で13万ほどお得ですが、それよりも自分たちにとって最適な時期かどうかの方が大切なはずです。実際の物件と年収、金利で検証してみてください。
どんな時が買い時?
買い時とは自分たちの中でマンションを購入してしっかりローンを返していける目安がたったその時なのです。その上で、少し早めに進めて有利な特例が利用する。あるいは少し遅らせて新しい特例を利用するなどの検討を加えます。何よりも自分たちが準備できているかどうかが大切で社会状況はそのあとのことです。一般的な買い時の例をあげると……
・若いほうが買い時
・頭金が十分であれば買い時
・金利が低い今なら固定金利で買い時
・定年までに返済できるなら買い時
・子供が就学前に買い時
・共働きで子供を作るまで数年あるのであれば買い時
若い方が有利なのは、病気にもかかりにくく、万一困難に直面してもやり直しがしやすく、親も現役であれば一時的に頼ることも可能だからです。もちろんしっかりと準備ができている前提です。子供が就学前に買い時なのは学校のこともありますが、子どもには故郷が必要だからです。住まい選びは子供の故郷選びでもあるのです。また共働きであれば、子どもが生まれる前、または教育費がかかる前に、一気に繰り上げ返済することが可能だからです。
社会状況は具体的な金額を計算してみて、冷静に自分にとっての買い時を見極めましょう。行ける!と確信したならば、その後はいたずらに時間ばかりかけずに、有利な制度を最大限に利用しましょう。
<著者プロフィール>
佐藤 章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
※画像は本文とは関係ありません