トップ選手育成や部活動など若年層のスポーツに活用
導入事例として目立つのはナショナルチームやプロチームだが、真に「ONE TAP SPORTS」が活きてくるのは育成分野ではないかと宮田氏は語る。プロチームの下部組織であるユースチームや付属校を持つ大学などでは、若い世代を的確に育成することでトップチームの勝利へつなげるという考え方で利用できるほか、データ上で今後成長する選手を探すことができる可能性もあるという。
育成年代への導入について宮田氏は「例えばプロ野球のチームでも1軍には導入せず、2軍以下のみというところもあります。ベテランの選手は主観と客観のズレが少ない傾向があるのですが、経験が少ない選手はやはりズレが大きい傾向がありますし、若手だと若さや体の柔軟さで無理をしてもカバーできてしまうことがあるため、限界を超えると大きなけがになったりする可能性もあります。育成年代こそデータ管理は重要です」と説く。
データを記録するだけで強くなるというものではなく、分析が重要であるため少年チームで導入すれば、すぐ勝てるようになるというものではないが、内容の汎用化やオンライン相談の充実などで対応力は強化できるという。
強化という観点では強豪チームのデータを参考にしたいという要望も想定されるが、その点について同氏は「データは個人情報のため、もちろんそのまま提供することはできませんが、リーグや競技団体全体にとって有用なデータであれば共有したい、とうニーズが実際に出てきています。これは、そのスポーツを統括する競技団体のコンセンサスが不可欠となり、今後の日本スポーツ界の大きな課題となると思います。これが可能になれば、部活動など十分な知識を持つ指導者に恵まれないチームでも適切な練習をするためのアドバイスを提供できる可能性があります」と述べた。
高齢者ケアにも対応して少子高齢化社会で活躍
現在、ONE TAP SPORTSはコンディショニング機能に特化した「ONE TAP Conditioning」、選手のけが・受傷の履歴を一括で管理する「ONE TAP Injury」といった周辺ソリューションも展開している。また、けがを予測したり、治療記録を残したりするだけでなく、リハビリの経過などを管理する機能を備え、この部分を利用して高齢者向けのデイケア施設での活用も今後は予定されている。高齢者の運動機能維持や回復は、多くのスポーツトレーナーが対応を開始している分野でもあり、スポーツ選手の能力向上を図る時と基本的には同じ考え方のシステムで対応できるという。
宮田氏は今後の国内スポーツ産業を踏まえ「現在、日本のスポーツ産業は5兆円規模ですが、今後は15兆円への拡大をスポーツ庁は掲げています。ONE TAP SPORTSによるデータ蓄積・分析により、これまで見えてこなかったものが見えるようになってきました。今後、スポーツの現場で、より迅速なデータ集計・分析が行えるようにすることで、指導者やトレーナーなどの業務を円滑にするお手伝いができればと考えています。それにより、チーム強化とひいてはスポーツ市場を拡大していく一助となりたい」と将来的な展望について意気込みを語った。
トレーニングやコンディションを整え、試合へ向けて状態をピークへ持っていく、ゲームやトレーニングでけがをしてしまった場合にはリハビリを行い、コンディションを戻す。通常時のサイクルと非常時のサイクル全体をカバーしているのがONE TAP SPORTSの魅力だ。少子高齢化社会の中、優秀な選手の発掘やけがのない育成、高齢者の運動能力維持の両面に貢献できるのも大きなポイントだろう。これまで指導者や選手の個人的な経験や忍耐、努力で支えられてきた日本のスポーツの現場が大きく変わる鍵になりそうだ。