ラグビー日本代表が衝撃的な勝利を飾り、話題となったラグビーワールドカップ2015。南アフリカ代表を相手に勝利したチームは報道でも大きく取り上げられ、それまでラグビーという競技にほとんど興味を持っていなかった人でも選手の名前や顔を覚えたことだろう。奇跡が起こったというような雰囲気で語られることもあったが、実際には勝てるチームを目指し、着実に歩んできた結果の象徴だったという。
ラグビー日本代表の「経営戦略変革」を側面サポート
「従来、体格的(フィジカル)にどうしても外国勢に劣る日本人は、手先の器用さやスピードで戦うべきだという考え方でした。しかし、フィジカルに背を向けずに過酷なトレーニングを課して限界まで鍛えていく、というのがエディージャパンのスタイルだと聞かされました」と語るのはエディー・ジョーンズ氏が日本代表ヘッドコーチに就任した後に、代表チームを影で支えてきたユーフォリアの代表取締役/パートナーである宮田誠氏だ。
ユーフォリアは現在、スポーツ選手の体調管理をクラウドで行うサービス「ONE TAP SPORTS」を展開している。同サービスのベースとなっているのが、ラグビー日本代表のトレーニングを支えるためにオーダーメイドで開発されたシステムだ。現在はユーフォリアのメインビジネスになっているONE TAP SPORTSだが、当時は特にスポーツ分野に特化した展開を行っていたわけではなかったという。
宮田氏は「2008年に数人の仲間とともにユーフォリアを設立し、企業の課題解決を行うコンサルティングファームを主力事業としていました。2012年にラグビー日本代表チームとの出会いがありましたが、そこで聞かされたのが2019年に日本で開催されるワールドカップに向け、チームのすべてを変えていくという話でした。それはいわばチームとしての『経営戦略』を変えていくという話でした」と語る。
2019年のワールドカップは自国開催であることもあり、ベスト8に入るのが目標だという。しかし、これは2012年当時の日本代表にしてみれば、あまりにも高すぎる目標だった(過去7回のW杯の戦績は1勝21敗2分け)。実現するためには、どの時点の大会で、どのような成績を収めていなければならないのかという目標が明確に出てくる。そこを睨んで逆算した動きがユーフォリアへの呼びかけだった。
「勝つためには戦い方を変えなければいけない。戦い方を変えるためには体を変えなければいけない。体を変えるためには、けがをするギリギリまで追い込まなければならない。言い換えれば、けがをさせないためにはギリギリまで追い込んだところで止めなければいけない。それを『見える化』するツールを作ってほしいというオファーでした」と宮田氏。
スポーツに特化したシステムを作った経験はなかったが、求められている内容は従来の企業向けシステムの設計思想とかなり近いものがあり、十分対応できるだろうという判断でユーフォリアは開発をスタートさせた。