レノボ・ジャパンは6月30日、大和TechTalkと題して、ThinkPadのイノベーションを支える開発研究に対する取り組みを説明した。
まずはレノボ・ジャパン 取締役副社長の内藤在正氏が挨拶。IBM時代は(旧)大和研究所でワールドワイド向けのThinkPadを設計していたが、現在レノボは、みなとみらいの山と研究所と米沢事業所の日本サイトのほか、北京と米国でもPCの開発を行っている。
初代ThinkPad「ThinkPad 700C」の登場からおよそ四半世紀が経過し、IBM時代を知らないエンジニアも多くなったが、Thinkpadを生み出す「理念」はいまでも継承しているという。また横浜と米沢がJAPAN TEAMとしてLenoovブランドのPCを支えるテクノロジーをけん引する存在になるとした。
ThinkPad開発理念を世界の開発拠点で共有する「ThinkPad開発哲学の木」
次にレノボ・ジャパン 大和研究所 ソリューション開発部 システムデザイン戦略 エンジニアの山崎誠仁氏が「ThinkPad開発哲学の木」として、大和研究所で培われた理念を世界の開発部隊に広げる取り組みを紹介。ThikPadは堅牢かつ安全性の高いビジネスPCとして生まれた一方、デバイスも生活スタイルも変化しつつある状況で、いかに原点からブレずにPCを開発できるのか、ということでThikPad開発哲学の木を考え出したという。
ThinkPadの開発には土台と目指すものが必要であり、前者はお客様のニーズとイノベーションや技術の種が、後者はユーザーの生産性を上げるという目標である。そしてそれらを繋ぐのがThinkPadの開発哲学で「信頼される品質」「親しみやすさ」「先進性」を軸とし、エンジニア一人一人がその専門分野において、具体的な意味に置き換え、作業を進めるうえでこれらの原点に合致するのかを見極める事が大切であると説明した。
新しいユーザー体験を生み出すための「WOW+キャンペーン」
新しいユーザー体験を生み出すための活動「WOW+キャンペーン」をアドバイザリーエンジニアの川北氏が説明。ユーザーが「WOW!」と言ってもらえるような体験を生み出すため、現在年3回行っている活動で、ユーザーが困っている「ペインポイント」を見出し、その解決ができるような提案を行う。
以前、レノボは「PC+」という戦略を打ち出し、PCやタブレットをシーンに応じて使いこなすということを提唱していたが、このときも「WOWキャンペーン」として年1回アイディアの発掘を行っていた。これが「WOW+」として進化。現在はさまざまなデバイスやサービスを連携して活用する「PC&スマートデバイス時代」となり、新しいユーザー体験を提案するものへと回数も増やして実施。新人研修としても組み込まれているだけでなくNEC PCとの協業も行っているという。
この活動として実際の製品に生かされた実績としてはThinkPad X1 Carbon/X1 YOGAで使われたインテリジェント・センシング・エンジンや画面表示に書込みやメモをおこなってアイディアをシェアする「WRITEit」があるほか、実用化に至らなくても特許を取得して知財としての活用しているという。
日本の技術力が問われる?! ThinkPad X1 Carbonにおける新技術の紹介
最後に先日発表されたThinkPad X1 Carbon/ThinkPad X1 Yogaにおける技術チャレンジに関してレノボ・ジャパン 大和研究所 STIC 先進技術開発 部長/ディレクターの互井秀行氏が説明。
X1シリーズは薄型軽量化のトレンドの中、登場した製品だ。2011年に登場した「ThinkPad X1」は既存のThinkPadよりも薄型軽量となったが、それでもまだまだやれることがあるとして、すぐに次世代機の開発に着手し、生まれたのが2012年のThinkPad X1 Carbonだ。これをベースとして世代を重ねてきた。
2015年の第3世代ThinkPad X1 Carbonでやれることはやりつくした感があったというが、「ワールドワイド、特に北米では2.5ポンド(1,130g)以下の製品を求めている」との要求が来たため、これまでから設計を大きく見直したという。
キーボードに関してYOGAにはLift'n' Lockキーボードを採用。将来はYOGAスタイルを採用する全モデルに? という問いには「コンシューマー向けの場合は軽量薄型を重視するニーズから全部は無理」とのことだ |
ThinkPad X1 Carbonは、軽量化のためにカーボンファイバーを利用したので、筐体部分の軽量化のためには構造素材から見直さなければならない。NEC PCのLavie Zで使用されているマグネシウムリチウム合金も検討されたが「ワールドワイドに向けたThinkPadで使うには供給量が足りない」ということで、マグネシウム合金にレアアースを加えたスーパーマグネシウム合金を採用された。
これによって筐体最薄部厚を0.8mmから0.5mmへと薄型化。キーボードフレームとボトムカバー共に100g以上あったものをどちらも90g台にして3/4の重量削減が行えたという。しかしこの薄型筐体は、捻じれ対策など非常にサプライヤー泣かせの設計だったようだ。
熱設計に関しても、ThikPadのデザイン性を損なわずに放熱性を上げるべく、第9世代のふくろうファンや場所によってフィンの高さを変える階段フィン、放熱性の高い外部塗装に加えて、センサーを活用して利用状況を自動判断して冷却・速度を変更する「インテリジェントクーリング」を採用したという。
センサーを活用するというインテリジェント・センシングもたとえば「手に持って歩いている」と判断すれば自動的にディスプレイをOFF、逆に閲覧状態と判断するとディスプレイOFFにせずに快適に閲覧することが可能にするなど、ユーザーの動きに合わせて自動的にデバイスの動作を変える。これは前述した「WOW+キャンペーン」から誕生した機能だ。
最後に製品発表当初から予告されていたものの、発売時期が未定だった有機ELディスプレイ搭載ThinkPad X1 Yogaについても言及。有機ELは高い色再現性や完全黒の高いコントラスト、高応答性が魅力な一方、焼きつき問題や明るいと消費電力が高いという問題がある。
そこでディスプレイ内で表示時間をチェックしてその補正を加えたり、明るすぎる表示は意図的に輝度を落として省電力を図る。また、Lenovo Settingに有機ELに合わせた7種類の色空間設定や、焼き付きの原因になるタスクバーや不必要なバックグラウンドウィンドウの輝度を抑えるという工夫が施されている。有機ELディスプレイ搭載モデルに価格は税別323,000円からで、発売時期は「今夏」と公表された。